固定電話の加入権とは?価値が低下している背景や特徴、加入権なしで電話を利用する方法を解説
固定電話の加入権は、かつて日本の通信インフラにおいて非常に重要な位置を占めていました。家庭や企業で電話を使うためには必ずこの加入権を取得する必要があり、加入権は電話を利用するための基本的な権利として、多くの人々にとって不可欠なものでした。
しかし、時代の変化と共に、通信技術が急速に進化し、現在では携帯電話やインターネットを通じた通信手段が主流となっています。その結果、固定電話の加入権の需要や価値は大きく低下し、加入権の意義はかつてほど重要視されなくなっています。
本記事では、固定電話の加入権の概要、加入権の価値が低下している背景、さらには加入権なしで電話を利用する方法について紹介します。
固定電話の加入権とは
固定電話の加入権とは、かつてNTTが提供していた固定電話回線を利用するために必要な権利です。加入者はこの権利を取得することで電話を設置し、サービスを利用できるようになっていました。
具体的には、「施設設置負担金」と呼ばれる費用を支払い加入権を取得し、NTTの固定電話回線を利用する権利を得る仕組みです。この加入権は、一度取得すればそれ以降もその権利を保有し続けられ、電話回線の利用を継続する限り有効でした。
加入権は、個人や企業にとって大きな資産とされており、特に電話回線が限られていた時代には非常に高価なものでした。1960年代から1980年代にかけて、日本全国に固定電話の普及が進む中で、加入権は希少価値があり、家庭や企業にとっては重要な通信手段を確保するためのものとして需要が高まりました。当時は、多くの家庭や企業が高額な設備設置負担金を支払って加入権を取得し、電話回線を利用し、業務や日常生活を支えていたのです。
この加入権は、単に電話を利用するためだけでなく、将来的には他者に売却したり、譲渡したりすることも可能でした。このため、加入権は一種の投資として考えられる場合もあり、特に企業間では取引の対象となるケースもありました。
しかし、携帯電話やインターネットなどの新しい通信技術が登場し、固定電話の利用が減少するにつれて、加入権の価値は徐々に下がり始めました。
固定電話の加入権の費用と売却・譲渡
固定電話の加入権を取得する際には、NTTに対して「施設設置負担金」という初期費用を支払う必要がありました。この施設設置負担金は、電話回線を整備するための費用の一部を加入者が負担する形で請求されていました。
加入権は一度取得すれば基本的に保有し続けられましたが、解約や譲渡、売却が可能であったため、その取引価格も時代ごとに変動してきました。
固定電話の加入権はいくら?
固定電話の加入権を取得する際に支払う設備設置負担金は、1985年から2005年まで72,000円(税別)でした。2005年以降は、36,000円(税別)に設定されています。
この加入権は、電話回線の契約を行った際に支払って取得します。その後、売却や譲渡などが可能です。
売却・譲渡の際の値段は?
固定電話の加入権は、かつては高額で取引されていましたが、現在ではその価値がかなり下がっています。一般電話回線の売却・譲渡価格は買取業者で1,000円~3,000円前後です。また、電話加入権を売却・譲渡したとしても、NTTからの返金はありません。
売却や譲渡の際の価格は、かつてのように高値で取引されることはまれであり、多くの場合、売却自体が難しくなっています。これは、加入権を持っていることが固定電話の利用においてさほど大きなメリットをもたらさなくなったためです。
特に企業においては、固定電話の利用を避け、携帯電話やIP電話、さらにはクラウドPBXといった新しい通信手段を導入するケースが増えてきました。これにより、固定電話の加入権を売却しようとしても、買い手がほとんどいないという状況が続いています。
価値が低下している背景は?
固定電話の加入権の価値が急速に低下している背景には、いくつかの要因があります。第一に、携帯電話の急速な普及が固定電話の利用を大きく減少させました。特に、1990年代後半から2000年代にかけての携帯電話の普及は、家庭や企業において固定電話の必要性を急激に薄れさせました。携帯電話は持ち運びが可能であり、場所に縛られず通話ができるという利便性が固定電話を凌駕したのです。
さらに、インターネットを利用したVoIP(Voice over Internet Protocol)技術の普及も、固定電話の需要を減少させる要因となりました。VoIPは、インターネットを通じて音声通話を行う技術であり、従来の固定電話回線を必要としません。これにより、企業や個人が固定電話回線を使用せずに通信を行えるようになり、固定電話の加入権はますます価値を失っていきました。
加えて、クラウド型の電話システムの登場も固定電話の加入権の価値低下に拍車をかけています。クラウドPBXなどの新しいシステムは、物理的な回線を必要とせず、インターネットを通じて柔軟に電話システムを運用できるため、固定電話に依存する必要がなくなってきています。
固定電話の加入権に関する3つの特徴
固定電話の加入権にはいくつかの特徴がありましたが、その中でも特に注目すべきなのは以下の3つです。
月額利用料が安くなる
固定電話の加入権を持っていると、月額の基本利用料が通常よりも安く設定されるケースがありました。NTTの固定電話サービスでは、加入権を所有している利用者には「基本料割引」が適用される場合があり、加入権の支払いによって、施設コストを負担しているため、結果的に月額料金が抑えられるのです。
利用休止・一時中断・解約が可能
固定電話の加入権を所有している場合、利用を一時的に休止したり、中断したりすることが可能です。例えば、引っ越しや事業の一時停止などの理由で電話回線を利用しない期間がある場合、電話回線自体を解約せずに、利用を休止状態にできます。これにより、再度固定電話を利用する際に新たに加入権を購入する必要がなく、コストを抑えられます。
手続き | 解約 | 利用休止 | 一時中断 |
対象回線 | 加入電話
加入電話・ライトプラン INSネット64 INSネット64・ライト |
加入電話
INSネット64 |
加入電話
加入電話・ライトプラン INSネット64 INSネット64・ライト |
休止・中断期間 | ー | 最大10年間
5年ごとの更新が必要※ |
再開の申告があるまで |
回線使用料の支払い | ー | ー | 要
毎月の回線使用料が必要 |
電話を止める工事費 | ー | 3,300円 | 3,300円 |
電話を再開する工事費 | ー | 3,300円~22,000円程度 | 3,300円~22,000円程度 |
電話の再開予定 | なし | あり
再開時の電話番号は変更 |
あり
再開時も電話番号は同じ (利用場所が変わる場合は、変更となる場合あり) |
参照:NTT西日本「解約・利用休止・一時中断」
https://www.ntt-west.co.jp/denwa/tetsuduki/stop/gaiyou.html
利用休止時は更新手続きが必要
加入権を一時休止する場合、定期的に更新手続きを行う必要があります。利用の停止期間は最大10年間(5年ごとの更新が必須)です。一時中断は、再開申し込みがあるまで停止されます。これらの手続きを行えば、不要なコストを削減可能です。
この更新手続きには、NTTに対して一定の費用が発生するため、利用者にとってはやや手間がかかる部分です。長期間にわたって電話を利用しない場合でも、更新手続きを忘れると加入権が無効になる可能性があるため、注意が必要です。
加入権なしで固定電話を使うなら「クラウドPBX」
固定電話の加入権が不要な新しい電話システムとして注目されているのが「クラウドPBX」です。クラウドPBXは、従来の物理的な電話交換機(PBX)をクラウド上で仮想化したもので、インターネットを利用して電話システムを管理・運用します。このシステムを導入すれば、企業や家庭は物理的な電話回線や加入権を必要とせず、柔軟に低コストで電話サービスを利用できます。
クラウドPBXは、特に企業にとって大きなメリットがあります。従来のPBXシステムを設置するには、高額な初期費用と維持費がかかる上、物理的な設備が必要でした。しかし、クラウドPBXではインターネットを通じてシステムを運用するため、これらの物理的な制約が取り除かれ、コストを大幅に削減できます。
また、クラウドPBXは場所を問わず利用できるため、リモートワークや出張中でも会社の電話番号で通話が可能です。これにより、従業員がどこにいても業務を円滑に進められるため、業務効率が向上します。さらに、企業の成長に合わせて簡単に回線数を増減できるため、スケーラビリティも高く、急な事業拡大にも柔軟に対応できます。
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まとめ
固定電話の加入権は、かつて日本の通信インフラにおいて重要な役割を果たしていましたが、現代ではその価値が大きく低下しています。携帯電話やインターネットの普及、そしてクラウド型の通信システムの登場により、加入権の必要性が薄れてきました。
現在では、多くの家庭や企業が加入権を持たず、クラウドPBXなどの新しいシステムを導入し、効率的かつ低コストで電話を利用しています。これからの時代、加入権に依存しない通信手段がますます主流となり、固定電話の加入権の意義はさらに薄れていくでしょう。