クラウドPBXを企業が導入するための手順とポイント
従来企業向けの電話運用システムの主流であった「ビジネスフォン」の仕組みを改良し、より便利かつ柔軟な運用がより低コストで可能となった画期的な企業向けの電話システム「クラウドPBX」が近年、コロナ禍を経てますます話題を呼んでいます。
クラウドPBXは、ビジネスフォンを応用した新たな仕組みであるため、元々企業向けのサービスではあるのですが、特にこれからのポストコロナの時代において企業活動に役立つメリットが沢山あります。
今回は、クラウドPBXの仕組みやメリット、導入手順、導入時の注意点となるポイントも含めて解説することで、クラウドPBXが企業にとってどのように役立つのかを紐解いていきます。
クラウドPBXの仕組み
クラウドPBXは、冒頭でも軽く説明した通り、「ビジネスフォン」の仕組みを改良したものです。専門用語を用いて言うとするなら、従来型のオンプレミス環境をクラウド環境に置き換えたものです。
ビジネスフォンは、簡単に言うと「電話回線を複数台の電話機で共有する」システムのことです。ビジネスフォンのようなオンプレミス環境では、会社内に「主装置(PBX)」と呼ばれる構内交換機を物理的に設置し、主装置に対して電話回線と複数の固定電話機をすべて有線接続するという構造を持っています。要は頭脳となる「主装置」を用いて電話機や電話回線を一元的に管理しようという仕組みで、これはクラウドPBXでも変わりありません。
それでは何が違うのかというと、クラウドPBXの場合はまず「主装置をクラウド上に仮想的に設置する」というのがビジネスフォンとの大きな違いといえるでしょう。つまりクラウドPBXでは物理的な主装置を会社に設置する必要はなく、代わりにインターネット回線上に仮想的な主装置を置くということです。そして、「通話にはインターネット回線を使うので電話回線が不要である」ことと、「スマートフォンやノートパソコンなど持ち運び可能なデバイスで利用できる」こと、そして「デバイスと主装置を、インターネット回線を利用して相互接続する」こともクラウドPBX特有の特徴です。
クラウドPBXはビジネスフォンと違って、会社などの拠点にシステムが縛られることがありません。何故ならシステムの中枢である主装置がクラウド上に置かれているので、インターネット回線があれば場所に関係なくどこからでも主装置にアクセスできるからです。有線接続して使用するIP電話機だけでなく、持ち運びが自由にできるスマートフォンなどのデバイスとも無線通信で接続できるので、どこへでも持ち運び可能です。
企業がクラウドPBXを導入するメリット
以上のように、クラウドPBXはクラウド上の主装置とインターネット回線、多種多様なデバイスを活用することで、会社拠点に縛られない自由な運用を可能にしました。実はこの「場所にとらわれない運用」こそがクラウドPBXのすべてのメリットにつながっており、従来のビジネスフォンを大きく超えるクラウドPBXの利便性に直結しています。
ここでは、数あるクラウドPBXのメリットの中でも、特に企業がクラウドPBXを導入することで得られるメリットを絞って紹介していきます。
コスト削減
クラウドPBXを導入することで、特に従来のビジネスフォンと比較した際に、非常に大きなコスト削減につながります。特に大企業では、従来型のシステムであれば利用回線数の多い大企業であるほど高額なコストが必要でした。
クラウドPBXを導入することで大きく削減できるコストとしてまず挙げられるのは、導入にかかる費用、いわゆる初期費用です。ビジネスフォンでは、社内に設置する主装置(PBX)や固定電話機といった設備の購入あるいはリース、および設置工事が必要になり、それぞれに高額な費用がかかっていました。
特に大企業では利用する電話の数も多いため、主装置の購入だけでも安くて百万円単位、高くて数百万~数千万円単位のコストがかかります。主装置を購入ないしリースして自社に設置するビジネスフォンでは、そうした高額な初期費用に加えてランニングコストとして、メンテナンスや修理など保守管理費用もかさんできます。
クラウドPBXであれば、主装置の設置や固定電話の設置及び工事も不要なので、これまでに挙げた費用をほぼ丸ごとカットできます。必要なのはサーバー側の設定作業等にかかる初期費用数万円のみ。スマホ・PCなどの通話用デバイスは別途必要になりますが、既に社用スマホや社用PCがあればそれらを転用でき、既にこうした資産を持っていれば導入に際してほとんどのコストをカットできますし、BYODを導入する方法もあります。
また、場所にとらわれない運用が可能なクラウドPBXでは、ビジネスフォンと違い離れた拠点同士での内線通話も可能なので、できる限り同じ会社の人間とは別拠点であっても内線で連絡を取ることで通話料金が大幅に削減できます。また、通話の際に固定電話回線ではなくインターネット回線(VoIP)を用いる関係でベースとなる通話料も安く、全国一律で固定電話の3分の1~5分の1ほどです。
特にこれから会社に電話システムを構築するなら、クラウドPBXのほうが圧倒的にコストが安く、便利に電話運用が可能なうえ、通信インフラに関しては保守管理費用もベンダー持ちなので、コスト削減を考えるならもはやクラウドPBX一択といってもいいくらいでしょう。
電話業務の効率化
クラウドPBXがもたらす「場所にとらわれない運用」は、電話業務に劇的な効率化をもたらします。従来のビジネスフォンでは、会社の電話番号で電話を掛けるにも受けるにも会社のデスクにある固定電話を使わないといけませんから、電話を使う際に「会社内にいなければならない」という制限が生じます。また、電話の取次ぎを行うにも取り次ぐ相手が外出していれば電話の取次ぎができないので、電話を受けた内勤者が用件をメモしておくなどして控えておかねばならず、用件を担当者に伝えるにも手間やお金がかかります。
しかし、クラウドPBXであればたとえ外出や出張で会社を離れていても、移動中でも構わず手持ちのスマートフォン等で会社の電話番号で通話を行えますし、外出している担当者に電話を取り次ぐ際も担当者の携帯宛に直接会社から電話を取り次ぐことができます。担当者が会社の電話番号で折り返す必要があるとしても、手持ちの携帯で会社の電話番号での発信もできますから、わざわざ帰社する必要がなくなります。
また、固定電話ではないので、離れた場所にある資料や倉庫にある商品の在庫状況を確認する際にも電話を切ることなく移動しながら電話が続けられますし、より確認場所に近い別社員の携帯に電話を取り次いで任せることもできます。
人の動きに無駄が生まれにくく、いつでもどこでも電話応対ができ、非常に合理的・効率的な電話運用が実現するでしょう。
多様な働き方の実現
運用に際して「場所にとらわれない」ということは、出張先や得意先など仕事に関する場所だけでなく、プライベート空間である自宅にいても電話応対ができるということでもあります。つまり、会社に電話番を置く必要がなくなりますので、在宅勤務やテレワークといった多様な働き方への移行がよりスムーズにいくのは間違いありません。
近年の感染症パンデミックなど未曽有の事態が起き、会社に集まることがリスクを高める状態となった時、テレワークやサテライトオフィスといった、オフィスへの出勤を伴わない多様な働き方を実現することで、個々の社員にとって最も働きやすい環境で働く自由がもたらされ、働きやすさの改善にも繋がります。
クラウドPBXを企業が導入する手順
クラウドPBXはこのように企業にとってもメリットが大きく、すぐにでも導入したいと思った企業も多いかもしれません。クラウドPBXを企業が導入するにあたって、必要な手順にはどういったものがあるのでしょうか。ここでは、クラウドPBXサービスの導入手順を解説していきます。
利用環境を確認する
クラウドPBXを導入するにあたってまず必要なことは、実際の利用環境を想定したうえで必要な環境構築のシミュレーション。具体的に言えば、クラウドPBXの通話に利用するデバイスの数や種類、本社と支社・生産拠点などクラウドPBXの内線構築を行う拠点の数、クラウドPBXの導入にあたって自社で必要とする機能の内容などをしっかりと社内で検討し洗い出しておくことです。
特に拠点が多く規模の大きい企業ほど、できる限り最初の段階でこうした計画をしっかり練っておくことは大切です。指示系統が複雑で中小企業に比べ動きにくく、これまでの電話運用とのギャップなども現場サイドで大きく感じてしまいやすい大企業では、こうした洗い出しをしっかり行うことで導入までのプロセスにおける混乱を防ぎ、よりスムーズに移行できるでしょう。
特にデバイスの種類や数に関しては、基本的にはベンダーも手配してくれず自分で用意する必要がありますから、のちの自分たちの首を絞めることになる前にちゃんと明確にして、必要なデバイスを必要なだけ準備しておきましょう。クラウドPBXは対応機種が多いので既にある自社資産からの転用も可能ですが、本当に必要なものは具体的にどれだけの数あるかを明確にしたうえで、早め早めに準備しておくと大きな違いが出ます。
条件に合うベンダー・プランを探して比較
先ほどの利用環境を想定したデバイス数や拠点数などのデータを明確に洗い出しておくことは、ベンダー選びにも役に立ちます。契約するデバイス数(ID数)や内線数、それに対応したプランを照合・検討する上で台数や拠点数、必要な機能の内容と数が明確になっていると、より自社の条件と合うベンダーやプラン設定を探しやすく、比較検討もしやすくなるからです。
クラウドPBXはベンダーによって料金体系もプラン設定も提供する機能の内容やオプションにも細かな違いがあります。携帯電話のように大手を選べばそれでいいという業界でもなく、だからといって一番料金が安いベンダーを選べば安心かと言うとそうでもありません。
契約する側としてもできる限り明確かつ詳細なデータを、判断材料として用意しておく必要があるのです。そうしたデータをもとに検討を重ねていくことで、ベンダーによってどれくらいのリソースにどのくらいのコストが掛かるかも明確になりますし、本当に必要な機能や数だけを無駄なく契約することができ、無駄なコストをかけずに済みます。
できればデモやお試しキャンペーンを活用する
多くのベンダーで、実際の利用環境でのクラウドPBXの試用を目的とした無料でのデモ機貸し出しや、無料お試しキャンペーンを行っています。限られた期間内とはなりますが、こうしたキャンペーンを活用することで、契約前に自社環境での使い勝手に問題がないかどうか、必要な機能がちゃんと使えるかどうかを実際の環境できちんと確認できるのです。契約前にこうした機会が提供されていれば、絶対に一度は試しておきましょう。
申し込み・契約・初期設定作業を行う
さて、無料お試しキャンペーンやデモを活用して実際の環境での利用にも問題ないことが確認できたら、いよいよ申し込みです。
クラウドと聞くと難しい専門用語が沢山出てきて、仮想化がどうとか、SaaSがどうとか、高度な設定を行わなければならないイメージがありますが、それはすべてベンダー任せで大丈夫です。実際にお客様がやることは、1つだけ。「ベンダーとの契約書類を準備して契約手続きをすること」だけです。
この段階にきてもし、最初に必要と明示した洗い出しをしておかなかったら、契約段階で混乱することになります。ちゃんと必要な回線数やデバイスの数、必要な機能を明確にまとめておけば、手続きは非常にスムーズに進むでしょう。これは早ければ早いほどいいです。
契約もよくあるネット回線のプロバイダや携帯のキャリアと同じで、必要な回線数やデバイス数やオプション機能の有無に応じてすでに検討済みのプラン契約、あるいは従量制での契約になります。ビジネスフォンと違い大掛かりな設備の導入が不要なので、工事も特になく申し込みだけで終了です。申し込みが終わったら、ベンダーによりまちまちですが最短即日~1・2週間ほどで開通します。
開通が終わったらデバイス側の設定手順や管理コンソールの設定手順書が送られてきますので、その通りにアプリをインストールしたり初期設定をすれば導入は完了です。
クラウドPBXを企業が導入する際のポイント
以上のように、クラウドPBXはしかるべき手順をちゃんと踏めば導入は非常に簡単です。面倒かつ高度な設定や工事もなく、手持ちのデバイスで誰でもできる設定を行うことで運用が開始できます。そのため、契約段階では注意するべきことは特にないですが、それに対して契約前の準備段階には、思いのほか色々なことに注意をしておかなければトラブルの素になってしまいます。
ここでは、ベンダー選びの段階や契約前の段階でこれだけは注意したほうがいいということや、盲点になりがちなポイントを解説していきます。
電話番号を変更する必要のないベンダーやプランがおすすめ
企業の場合、既に固定電話番号を取得している場合が多いはずです。アナログ回線経由で取得した固定電話番号は取得に手間や費用が掛かることや、市外局番により会社の位置がある程度わかることもあって、「ちゃんと会社が存在する」という一定の社会的信用が担保されることをご存知でしょうか。
しかし、この大切な固定電話番号が、ベンダーによっては引き継いで利用できない場合がある点に注意が必要です。ベンダーによって使っている回線の種類がいくつかあり、特にIP電話専用回線を使っている場合、通話発信の際に使える電話番号の種類が限られてしまうので、場合によっては既存の電話番号を利用できず、電話番号の変更を余儀なくされる場合があります。その場合、IP電話専用の「050」番号への変更をしなければならないうえ、緊急通報用番号宛ての発信もできないなどの制限がかかってしまいます。
企業では規模が大きいほど電話番号の変更は修正や周知に大きな手間がかかるうえ、社会的信用のある番号を失うことになれば、まさに百害あって一利なし。ベンダー選びの際は可能な限り、というよりは絶対に、既存の電話番号をそのまま利用できるベンダーを選びましょう。
リース契約のビジネスフォンからの切替はタイミングが大切
特にビジネスフォンからクラウドPBXへの移行を検討されている場合は、現時点でのビジネスフォンの契約形態を確認しておくことはとても大切です。
買い切りとなっている場合はともかくとして、リースで契約している場合は契約満了期間がいつまでなのかを絶対に確認しておきましょう。リースでの契約の場合、契約期間が5年~7年というようにはっきり決まっています。契約期間が終わると社内に設置している設備の所有権もなくなるので、全ての設備を撤去しリース会社に返却しなければなりません。
また、契約満了を待たず中途解約する場合、高額な違約金と、残債分の機種代金を一括で請求されるケースも多いです。そのうえ、所有権もなくなり返却しなければならないことを考えると、最悪の場合タイミング的に全く電話が利用できない空白期間が生まれてしまう事にもなりかねません。
リース契約がまだ満了になっていない場合には、契約期間満了を待って移行できるように調整するか、あるいはVoIPゲートウェイという特殊な機器を使って段階的に移行の準備をすすめるなどの手段を検討してみましょう。
端末数やプランの変更が柔軟にできるベンダーがおすすめ
企業は人が大勢集まって常に流動的に動いていくものです。そして成長を前提に動く営利組織ですから、定期的に事業規模の拡大も行っていくでしょう。そうした人材の流動に合わせて、クラウドPBXの契約端末数や回線数、それに応じたプラン設定などを都度必要に応じて変更・調整できれば無駄なコストがかかりません。そのため、できれば柔軟に変更できるベンダーを選ぶと良いでしょう。
基本的には多くのベンダーは従量制の契約形態をとっているのでさほど問題にはならないかもしれませんが、特に規模が大きい企業の場合は変動幅もそれだけ大きくなりますし、プランを変えると大きく台数や条件が変わってしまう場合もあるかもしれません。こうした変更を想定した計画を立てたうえで、事前にベンダーに相談するのが確実と言えるでしょう。
企業におすすめのクラウドPBXなら「ナイセンクラウド」
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▼1分でわかるナイセンクラウド
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企業はクラウドPBXでコスト削減・業務効率化を図ろう
企業がクラウドPBXを導入することでどのような役に立つのかといったことをテーマに、クラウドPBXの仕組み・メリットや選び方、導入手順、導入前に意識するべき注意点までを網羅的に解説しました。
特に大きな企業はなかなか柔軟に動きにくい実態がありますから、特にビジネスフォンからクラウドPBXへ移行する場合にはじっくりと時間をかけて準備・調整を重ね、組織の総意として明確な目標をもって移行を進められるよう、社内での密な連携を常に作っておくことが大切です。迅速にというよりは、ゆっくり確実に、を常に意識して導入を検討してみてください。
なお、記事にも書いたように、ある程度ベンダー選びは慎重に行う必要があるので、焦って見切り発車状態で導入することは避けましょう。