テレワークに必要な就業規則とは?変更が必要な理由とモデルとなる就業規則をご紹介
テレワークは今までの働き方と異なるため、新たな就業規則が必要とされています。就業規則がそのままだと、実態に合わず、万が一の際にトラブルなど困ったことになる可能性があります。本記事では、テレワークに必要な就業規則や変更が必要な理由、テレワーク向けの就業規則の作成方法などをご紹介します。
テレワークの就業規則が必要な理由
テレワークを導入するにあたって、就業規則の変更が必要とされています。
テレワークを実施する人数が少なければ、個別の労働契約でも対応できるでしょう。たとえば、従業員が妊娠や病気などの事情があり、会社側でテレワークの実施を認める場合は、就業規則の改訂などは不要とされています。
しかし、会社全体で大規模にテレワークを実施する際には、共通のルールとなる就業規則の改訂が必要と考えられます。個別の労働契約の対応では、労働者間の不公平や不平等感を招く可能性があるためです。
そもそも就業規則とは
就業規則とは、労働契約の基本内容をまとめたものです。労働契約は、従業員が労働を提供し、会社がそれに対し、賃金を支払う契約のことです。従業員ごとに個別に労働条件を定めるのは手続きが煩雑になるため、就業規則としてまとめられています。
10人以上の従業員を雇っている会社であれば、就業規則の作成は必須となっています。就業規則の基本的な内容や監督官庁への届出などは法律で定められています。
テレワーク導入時に定める就業規則とは
勤務の定義
まずは「テレワーク」という勤務の定義です。テレワークは一般的に、「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイル勤務」があります。テレワーク勤務の定義では、自社で導入するテレワークがどの形態にあたるのかを示します。厚生労働省によると、それぞれの勤務形態は以下のことをいいます。
在宅勤務
在宅勤務は、従業員が自宅で就業する労働形態です。就業形態によって「雇用型テレワーク」と「自営型テレワーク」に分けられます。在宅勤務といっても全く出社しないわけではなく、1週間のうち何日かは出社する形態もあります。
1日の一部を在宅勤務にする「部分在宅勤務」を導入している会社もあります。半日休暇や時間休暇と組み合わせることで、従業員の利便性を高めることができるでしょう。たとえば、朝にWeb会議を行い、子供を保育園などに送り届けてから出社するなど、自由度の高い働き方ができるのが特徴です。
モバイル勤務
モバイル勤務は、ノートパソコンやタブレット、スマホなどを使用し、移動中の交通機関や取引先のオフィス、飲食店などで就業する形態です。たとえば、営業職など、外出が多い職種の場合、隙間時間や待機時間を効率的に使えるのが特徴です。
さらに直行・直帰と組み合わせれば、わざわざ一度オフィスに戻って仕事をする必要はありません。そのため、ワークライフバランスの向上にも役立つことが期待されています。
サテライトオフィス勤務
サテライトオフィス勤務は、サテライトオフィスやコワーキングスペースなどで就業する労働形態です。本拠地となるオフィスから離れた場所に、部門共用のオフィスを設置すれば、本拠地まで戻ってこなくても就業が可能です。またサテライトオフィスには、「専用型」と「共用型」に分けられます。
専用型は、自社や自社グループだけで利用するサテライトオフィスです。営業中や出張の際に立ち寄って利用します。自宅で仕事がしにくい人は、在宅勤務ではなく自宅の近くのサテライトオフィスで選ぶ場合もあります。
共用型は、自社だけでなく複数の企業や個人事業主と共用で使用するオフィスのことです。シェアオフィスやコワーキングスペースと呼ばれる場合もあります。設置当初はフリーランスや起業家などが利用することがほとんどでしたが、近年では会社が施設を契約し、従業員が利用するケースも多いです。また地方に住む従業員のために会社がオフィスを設置するケースもあります。
出典:厚生労働省「テレワークとは」
勤務の対象者
テレワーク勤務の対象者を決定します。たとえば、以下のケースが考えられます。
・全従業員が対象
・業務の内容や性質に合わせて対象者を絞る
・育児・介護・傷病などの事情がある従業員のみに絞る
また出社が必要な新入社員などは対象から外すなどの例外も考えられます。
ただし、正社員と非正規社員のような雇用形態の違いのみを理由にして、対象者から外すことは認められていません。
勤務時の服務規程
情報セキュリティ上の注意点や職務専念義務、秘密保持義務などを明確にしておきます。
たとえば、以下の内容です。
・テレワーク勤務中は業務に専念する
・情報および成果物は毀損しないように取り扱い、セキュリティガイドラインに準じた方法で、保管と管理を行う
・モバイル勤務者は、公衆無線LANスポットなど、情報漏洩リスクの高いネットワークへの接続は禁止する
・酒気を帯びて就業しない
など、詳しい内容は厚生労働省の「テレワークモデル就業規則の作成手引き」に記載されています。
出典:厚生労働省「テレワークモデル就業規則作成手引き」
勤務時の労働時間や休憩時間
テレワーク勤務時には、会社は従業員の労働時間を把握しておく必要があります。これは始業終業時間が決まっている会社でも、フレックスタイム制の会社でも同様です。
またテレワーク勤務においては、保育園の送り迎えなどプライベートな事情で業務から離れる「中抜け時間」はどうするのかという問題もあります。
厚生労働省のガイドラインでは、以下のいずれかに該当するとされています。
・休憩時間
・時間単位の年次有給休暇
・会社側で中抜け時間を把握せず、始業と終業の時間のみを把握する
いずれかに該当するかを決定します。ただし、社員間で平等性が保たれる必要があります。そのため、ルールを明確にして就業規則に定めておき、社員間で周知することが重要です。
出典:厚生労働省「テレワークモデル就業規則作成手引き」
テレワークにかかる費用の負担
テレワークには、通信費、備品、水道光熱費、事務用品費などの費用をどう負担するかという問題があります。一般的には、テレワークで社員側に過度な費用負担が生じることは望ましくありません。そのため、どの分を会社が負担するのか、従業員が会社に費用を請求する方法などを就業規則で定めておきましょう。
就業規則作成時の注意点
ここでは就業規則を作成する際の注意点をご紹介します。
就業規則の定め方やルールの確認
就業規則を作成または変更する際には、労働者の過半数で組織される労働組合や労働者の過半数を代表する人の意見を聞く必要があるとされています。
さらに就業規則を労働基準監督署へ提出する際には、労働者の意見を記載した書面を一緒に提出する必要があります。
また労働条件を変更する場合は、「労働者との個別合意」が原則となっています。合意による変更の場合でも、就業規則で定めた労働条件を下回ることはできないので注意しましょう。
就業規則の変更で労働条件を変更することもできますが、その場合は「労働者に変更後の就業規則を周知させること」「就業規則を変更することで労働者が受ける不利益の程度などを勘案して合理的であること」が必要です。どのような内容なら合理的なのか、厚生労働省のガイドラインを見ながら十分に検討する必要があるでしょう。
出典:厚生労働省「テレワークモデル就業規則作成手引き」
就業規則を周知する方法
新しく作成もしくは変更された就業規則は、従業員に周知されなくてはいけません。オフィスに掲示したり、社内イントラネットで閲覧できたりなど、いつでも見られる状態にしておく必要があります。また厚生労働省では以下の方法で労働者に周知させるとしています。
・常時各作業場の見やすい場所に提示または備えつける
・書面で労働者に交付する
・磁気テープ、磁気ディスクなどこれらに準ずるものに記録し、各作業場の労働者が記録の内容を常時確認できる機器を設置する
多くの会社では、社内一斉メールで周知する方法が行われています。これは同時に、自社のシステム内にデータを保存し、従業員全員が閲覧できるようにアクセス方法なども周知しておきます。
出典:厚生労働省「テレワークモデル就業規則作成手引き」
就業規則変更後は労働基準監督署に届ける
就業規則を変更した場合は、事業場ごとに管轄の労働基準監督署に届出なくてはいけません。届出の際には、経営陣から就業規則に関する承認を貰い、従業員代表の意見書を作成します。そして事業場を管轄する労働基準監督署に就業規則変更案と意見書の両方を提出します。
本社と各事業所も変更前と変更後の内容が同じであれば「本社一括届出制度」により、本社を管轄している労働基準監督署にまとめて届出が可能です。
提出する際には、就業規則、意見書、届出書を2部ずつ用意します。
届出方法は、窓口、郵送、CD-ROM等の電子媒体、電子政府の総合窓口「e-Gov」からの電子申請の4つの方法があります。
窓口で提出する際には受付印を貰って1部保管しましょう。郵送の場合は、返信用封筒を同封します。電子媒体の場合は最寄りの労働基準監督署に問い合わせましょう。
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テレワーク導入時には就業規則を確認しよう
テレワーク導入時には新たな就業規則が必要になるケースが多いでしょう。会社によっては、「緊急措置として導入したので就業規則は変えなくてもいいだろう」と思っているケースもあります。しかし、今後テレワークはますます普及する流れにあるため、就業規則を変えないままだと従業員とのトラブルに発展してしまうことも考えられます。そのため、自社の就業規則を見直し、テレワーク勤務に適していないようであれば、しっかり整備しておくことが重要と考えられています。厚生労働省がガイドラインなどを作成していますので、ぜひ新たな就業規則の作成を検討してみてはいかがでしょうか。