INS(INSネット)とは?ISDNサービスの終了に備えよう!
INS(INSネット)とは、1988年に開始されたデジタル通信サービスの名称です。多くの企業が採用しているサービスですが、2024年のISDNサービスの終了と共に、INS(INSネット)も終了が発表されました。INS(INSネット)サービスをISDN回線だと知らずに利用している企業も多いため、一度確認しておくことをおすすめします。本記事では、INS(INSネット)の概要や基本サービス、歴史や種類、おすすめの乗り換え先などをご紹介します。
INS(INSネット)とは
INS(INSネット)とは、1988年にNTTが提供を開始したデジタル通信サービスの名称です。加入者回線上でデジタル信号のやり取りを行います。デジタルデータ化された音声通話やFAXによる画像伝送、各種データ通信サービスなどを行います。
INS(INSネット)の基本サービス
INS(INSネット)では以下のようなサービスも提供されています。
・料金情報通知サービス
通話モードやデジタル通信モードでの通信終了時に、通信にかかった通信量を知らせてくれるサービスです。通信料金の管理に利用できます。
・通信中機器移動サービス
通信中に通信機器を操作することで、一時的に通信を中断して、他のコネクターに通信機器を移動・接続して再開できるサービスです。
・サブアドレス通知サービス
特定の通信機器の着信を可能にするサービスです。発信時に契約者回線番号にサブアドレスを追加することで、特定の通信機器だけを着信させることが可能です。
・ユーザー間情報通知サービス
通信の開始時や終了時などで情報を伝送するサービスです。1メッセージあたり128英数字の情報を送受信することができます。
INS(INSネット)の歴史
ISDN回線の提供が始まったのは1988年でした。1990年代後半にインターネットが一般的に普及するにつれ、そのデータ通信の早さなどから、ピーク時には約1,000万契約までになったといわれています。2000年前後になると、ADSLサービスの提供が始まります。ADSLには高速性と定額制という特徴があり、瞬く間に普及しました。2000年代半ばになると、NTTの次世代網であるNGNを利用した本格的な家庭向けの光ファイバー通信の提供が開始されます。圧倒的に高速であることから、メタル回線からの移行が進んでいます。そのため、NTT東西は光ファイバーへの一本化を進めたいと考えており、2024年をめどに、INSネットの終了を発表したのです。
INS(INSネット)の種類
INS(INSネット)は大きく分けて「INSネット64」「INSネット1500」の2種類があります。ここではそれぞれの特徴をご紹介します。
INSネット64
INSネット64は、一般家庭向けのサービスです。市中のメタル回線はそのまま、通信線の末端のNTT局舎と加入者側に交換機と終端装置を設け、アナログ回線から接続を切り替えることで提供されていました。従来のアナログ電話機やFAXなどを、加入者側の終端装置にそのまま繋いで使用することができました。
また高画質のFAXやパソコン通信、インターネットの高速通信などのサービスも提供されています。一本の回線がISDNのBチャネルに2本、制御用のDチャネルを1本束ねた構成となっています。そのため、1つの契約で2つの異なる相手と同時に通信することが可能です。
INSネット1500
INSネット1500は、主に企業向けに提供されている回線です。光ファイバー回線に、Bチャネル23本とDチャネル1本を束ねた構成です。アナログの電話回線を23回線分同時に利用することができます。またデータ通信の場合は、最大1.5Mbpsで通信可能です。
同時に多数の相手と通話する必要のある事業所や、ISNネット64に加入者からの接続を大量に受け付けているISPの通信拠点などに導入されました。
INS(INSネット)とISDNの関係
「ISDN」と「INSネット64」「INS64」はほとんど同じ意味で使われている言葉です。性格には、ISDNは国際規格の名称で、「ISNネット64」はNTTが提供しているISDN通信サービスの名称です。
国際規格であるISDN回線を利用した国内向けのサービスがINS(INSネット)であり、どちらも同じISDNです。
ISDNの歴史
ISDN回線は、デジタル信号を利用して通話する回線を指します。「Integrated Services Digital Network」の略称です。音声データを「0と1」に変換して通話する方式で、デジタル回線と呼ばれる場合もあります。音声データを変換するだけならアナログ回線でも可能ですが、ISDNにはデジタルならではのさまざまなメリットがあります。
一般的にISDNはアナログ回線と比較して音質がクリアなのが特徴です。デジタル信号は通話距離に影響されず、音質の劣化が少ないためです。さらにISDN回線は盗聴が難しいといわれています。ISDN回線は、音声データをデジタル信号に変換するため、盗聴するためには専門知識と機器が必要になります。アナログ回線は電気信号のため、デジタル信号に比べて盗聴しやすいと考えられています。
ISDNは終了へ
NTT東西が提供しているISDNは、2024年1月をもってデジタル通信モードが終了することを発表しました。2024年1月には固定電話網をIP網へと切り替えられ、「デジタル通信モード」と「一部のサービス」の提供が終了します。ISDNはインターネット回線だけでなく、POSレジや保険請求、EDIなどさまざまな用途で利用されているため、自社システムにISDNを利用している企業は乗り換えが必要です。
ISDNにはデジタル通信モードと通話モードがあります。その中で、2024年1月で終了するのはデジタル通信モードのため、通話モードは引き続き利用することができます。
ISDN終了の背景
ISDNが終了する背景は主に「設備の老朽化」と「利用者の減少」といわれています。ISDNに使用されている設備は、老朽化により、2025年頃になると機能の維持が難しくなるとされています。そのため、NTT東西は従来の設備をIP網へ切り替える作業を行っています。これに伴い、アナログ回線やISDN回線がサービス終了することとなりました。
また利用者の減少も終了理由の一つです。近年では、光回線などの高速回線の契約数が増えため、固定電話やISDNの契約者が減少しているとされています。そのため、維持が困難になったことが理由とされています。
INS(INSネット)を利用している企業は乗り換えが必要
EDIの切り替え先にはいくつかの選択肢がありま、中でも最もスムーズに切り替えられるとされているのが、インターネットEDIです。従来のEDIの場合、ISDN回線を用いているものが主流でした。一方、インターネットEDIはインターネットを使用しているため、比較的安価にEDIが利用できます。インターネットEDIにはいくつかのサービスがあるため、自社に合ったサービスを選びましょう。
乗り換えが必要かどうかの確認方法
自社がINS(INSネット)を利用しているかどうかは、以下の2つの方法で確認できます。
①「DSU」または「TA」に接続されている機器の構成や取扱説明書などで確認する方法
・DSU(ディジタルサービスユニット)の場合
DSUに接続されている機器(パソコンやルーターなど)の説明書で使用回線の確認を行います。
・TA(ターミナルアダプター)の場合
DSUからBRIケーブル、RS232ケーブル、USBケーブルを使ってパソコンやルーターなどを接続されているか確認します。
②NTT東西の請求書(料金内訳)に「INS通信料」が発生しているかを確認する方法
INS(INSネット)を使用している場合、請求書に「INS通信料」と記載されています。確認する際には、複数付きの請求書をチェックしましょう。
乗り換え先は光回線がおすすめ
現在、一般的に普及しているのは光回線のため、乗り換え先は光回線がおすすめです。光回線が登場した当初は、導入のための工事費用が高額でしたが、現在では初期工事費がお得になるキャンペーンなどを行っている回線も多くあります。従来よりも、費用の負担が少なくなっているため、乗り換えやすいでしょう。
また光回線を開通させれば、光電話も利用可能です。光電話は固定電話よりも月額料金などが安いため、企業でも利用されています。
さらに法人向けのインターネット回線サービスも提供されています。回線とプロバイダが同じ業者から提供されているサービスが一般的です。問い合わせ窓口が一つになるため、万が一の際の問い合わせや管理が楽になるでしょう。さらに、設備が一貫して管理されていれば、状況に応じて設備増強を行うことも可能です。導入する際には、料金だけでなく補償内容などのサポート内容もチェックしておくことが大切です。
INS(INSネット)利用者は早めの乗り換えを検討しよう
光回線の普及による利用者減少や設備の老朽化などから、INS(INSネット)は2024年1月に終了することとなりました。企業で、INS(INSネット)を使用している場合は、早めの乗り換え先を探すことをおすすめします。