UPSバッテリーとは?基礎知識をご紹介

専門用語集

UPSバッテリーは、万が一電力会社等から電力供給が無くなった場合、負荷に送る電気エネルギーを溜めておくためものです。電源の状態に関わらず、電気設備をスムーズに稼働させるために設計されました。インフラにおいて重要なシステムのため、企業は知識として知っておく必要があるでしょう。

UPSバッテリーとは

UPS(Uninterruptible Power Supply)は、重要なシステムを停電や充電トラブルから守る電源システムを指します。金融機関のオンラインシステム、インターネットデータセンターのような大規模システムから、サーバーやパソコンなどの機器まで、重要なシステムを停電や電源トラブルから守ってくれます。一般的に、整流器やインバータと呼ばれる電力交換部とバッテリーなどの蓄電部で構成されています。停電や瞬低が発生した際には、蓄電池に蓄えられた電力によって電力を供給し続け、電力交換装置によって電源トラブルが機器に与える影響を防止する働きが期待できます。

UPSバッテリーはバッテリーを内蔵しており、しばらくの間サーバーやレジスターなどに電気を供給する装置のことです。停電によってサーバーがいきなり停止することでデータが壊れるのを防止できます。またデータベースの処理を終了するまでの間、電源を保持することも可能です。

日本の電力事情は諸外国と比較して安定しているため、停電や電圧以上はほとんどないとされています。しかし台風、地震などの自然災害や火災、ビルの点検工事などに伴う電源切り替えなど、さまざまな場面で停電や電圧変動などが発生します。そのため、UPSによっていざという時のトラブルに備えることが大切なのです。

UPSバッテリーの重要性

UPSバッテリーは、電力会社からの電力供給が無くなった際に電気エネルギーを溜めておく装置です。バッテリーを常に使用できる状態にしておくことで、万が一の際にデータが破損してしまうことを防げます。

またUPSのバッテリーの品質は、UPSから電源供給されているコンピューターの運用品質に大きく影響するとされています。運用品質を低下させないためには、UPSバッテリーの品質維持管理を行うことは欠かせません。

バッテリーの種類と寿命

UPSバッテリーには種類があり、それぞれ寿命が異なります。

制御弁式船畜電池
MSE型 UPS専用型
MSE  長寿命MSE 高率放電用(FVH)
容量(Ah) 50~3000 50~3000 100,150:(モノブロックタイプ:mFVH)

50,200,300(セルタイプ:FVH)

期待寿命* 5~7年 9~12年 7~9年
日常保守 外形、周囲温度、測定電圧などの管理 外形、周囲温度、測定電圧などの管理 外形、周囲温度、測定電圧などの管理
備考 従来は大容量UPSに運用 ライフサイクルコストで有利 MSEに比べ寸法で有利

バッテリーの寿命は、容量が定格の80%以下になった時とされています。長寿命型のバッテリーの寿命は、設置環境や放電条件により異なりますが、13~15年程度とされています。バッテリーの交換を行う際には、UPS本体の寿命を考え、バッテリーの更新をするのか、UPSシステムのリニューアルをするのかを検討する必要があるとされています。

UPSバッテリー寿命の診断方法

UPSバッテリーが寿命かどうか判断するには、大きく分けて3種類あるとされています。

 

1.内部抵抗計方式:バッテリーの内部抵抗を測定して規格以内であることを確認する方法

2.模擬負荷放電方式:放電用模擬負荷装置を用いてバッテリーの放電を行い、規定以上の容量があるかを確認する方法

3.BSC診断方式:BSC診断でセル全数のバッテリー放電試験を行って診断する方法

 

1.内部抵抗計方式

バッテリーに1kHz,数十mA程度の電流を流して、内部抵抗に生じる電圧降下を測定します。内部抵抗に換算して診断を行います。微細な抵抗値を測定できますが、測定店の接触抵抗の影響を受けやすくなります。

 

2.模擬負荷放電方式

放電用模擬負荷を直接バッテリーに接続し、1~10時間の間でバッテリーを直接放電させます。総電圧を測定したら、電圧低下度の診断を行います。精度は高いですが、大掛かりな準備が必要です。また安全性を考慮するため、UPSの運用を止めてから行わなくてはいけません。

 

3.BSC診断方式

全セルのバッテリーに電流を流して、端子電圧の変化を測定する方法です。電圧低下度を確認します。シンプルな測定方法で、大電流を流すことで正確性が高いとされています。また時間もかからず、UPSを止めることなく運用中に診断が可能です。

UPSバッテリーの寿命を延ばす方法

UPSバッテリーの寿命を少しでも延ばすためには、原因を知り、対策を施すことが大切とされています。ここでは、寿命が短くなる原因とその対策方法をご紹介します。

寿命が短くなる原因

UPSバッテリーの寿命が短くなる原因には、以下が考えられます。

・UPSデバイスを不適切な方法で保管している

・頻繁に使用してサイクル回数が多すぎる

・誤った電圧で充電している

・誤った種類のバッテリーを使用している

 

こうした状態にあると、UPSバッテリーの寿命が短くなってしまうため、対策を施す必要があるでしょう。

定期的なバッテリーテストを行う

バッテリー寿命を伸ばすには、定期的なバッテリーテストを行うことが重要とされています。市販されているUPS製品の多くには、リチウムイオン電池、ニカド電池、船蓄電池などが使用されています。これらの電池は、いずれも最終的には劣化してバッテリー性能が低下します。

定期的にバッテリーテストを行い、バッテリーの充電量をチェックすれば、規定の動作時間を確保できます。UPSに最適なバッテリーテストは、インピーダンステストとされています。このテストは、AC信号を印加することで、バッテリーに応じたAC電圧の損失が測定できます。バッテリーのインピーダンスが大きいほど容量が少なく、交換が必要とされています。

適切な温度範囲にする

バッテリーを適切な温度範囲に保って保管することも大切です。バッテリーは、化学物質をベースにして、ある物質から別の物質へイオンを移動させるといわれています。イオンが電子を放出することで、回路を形成します。このため、バッテリーの多くは、最も快適に動く温度範囲が設定されています。この温度範囲を超えてしまうと、性能の低下や電圧不足の原因となってしまいます。さらにバッテリーの内部構造が、早めに破損する可能性が高くなるでしょう。

 

バッテリーの種類ごとの適切な温度範囲は以下とされています。

・リチウムイオン電池:15~35℃

・ニッケル電池:0~30℃

・鉛酸:20~25℃

鉛畜電池は安定性が低いため、温度管理が特に重要といえます。

放電サイクル回数の削減

放電サイクルとは、製品が劣化するまでに何回充放電できるかを示すサイクルです。メーカーは、一般的な製品のサイクル寿命を記載しています。既存のバッテリーの場合、充放電によって電池自体が物理的に変化します。そのため、どうしても一定の寿命があります。電気分解の過程では、酸化物が発生し、陽極から液体電極へと変わります。時間が経過すると、これらがショートの原因となるため、完全に充電された状態でも、バッテリーの容量が減ってしまうのです。

このため、UPSは通常、バッテリーの放電頻度を減らす努力が行われています。しかし、多くのバッテリーでは、偶然起こった停電時には放電されていません。また電力供給が不安定な場合、UPSを繰り返し起動しなくてはいけないため、バッテリーの消耗が早くなってしまう可能性があります。もし、常にUPSを起動する場合は、電気技術者に原因を調査してもらい、問題を解決してもらう必要があるでしょう。

乾燥した場所に保管する

バッテリーは涼しくて、乾燥した場所に保管するのが適正とされています。多くの企業では、UPSを必要な時のバックアップ電源の供給元として保管しています。しかし、適切な温度で保管しておかないと、内部が劣化して、万が一の際に役立たない可能性があります。

特に、鉛畜電池は25℃以上の温度上昇に非常に弱いとされています。約8℃上昇してしまうと、電池寿命が半分になると考えられています。そのため、高温の部屋で保管してしまうと、バッテリーサイクル寿命が短くなってしまう可能性があります。

また温度だけでなく、湿度や空気の流れも重要とされています。UPSバッテリーは、密閉されたケースで保管するのではなく、空気が自由に流れるようにするべきです。たとえば、両サイドに、空気が流れるためのスペースを確保し、できる限り10℃以下で保管します。水や湿気もバッテリーの腐食の原因となりますので、乾燥した環境においておきましょう。

パワーセーブデバイスの搭載

停電時にUPSが起動し、全ての機器の電力が供給された場合、電化製品や照明に使われていると、バッテリーの消耗が激しくなります。しかし、省エネ機器を導入することで、UPSの消費量を減らすことができるとされています。たとえば、LEDランプは一般的な白熱電球と比較すると、消費電力を最大75%削減できるとしています。また、一部のUPSには、省エネ効果が期待できる「ECOモード」が搭載されているため、積極的に使用しましょう。

UPSバッテリーについて知ろう

UPSバッテリーは、停電時などに電力会社などから電力供給が無くなった際に、負荷に送る電気エネルギーを溜められる装置です。停電時などでしばらくの間、サーバーやレジスターなどに電気を供給することで、データの破損などを防ぐことができます。UPSバッテリーは非常時に使うものですが、定期的なメンテナンスを行わないと、いざという時に力を発揮できない可能性があります。適切な環境で保管し、万が一時に使えるようにしておきましょう。