鉄道電話とは?仕組みや現在について解説します

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鉄道電話とは、鉄道会社が独自に運営している電話網のことを指します。電車を適切に運行するには欠かせないものとされ、2000年代に入ってからはIP網化もされています。本記事では、鉄道電話の概要や仕組み、現在の取り組みなどをご紹介します。

鉄道電話とは

鉄道電話とは、列車電話とも呼ばれる電話網です。列車と基地局は無線通信で結ばれており、機器局の交換装置を介することで一般の加入電話との通話が可能です。鉄道では、列車の衝突事故などを防ぐため、安全を確認した上で運行しなくてはいけません。そのため、駅と駅の間で情報を交換する必要があります。電話が発明される以前はモールス信号や電信機などが採用されていたとされます。鉄道電話は、鉄道路線網の拡大と共に規模を拡大していきました。

鉄道電話の歴史

日本における鉄道の通信システムの歴史は1872年に、新橋─横浜間に鉄道が開業した際に遡るとされています。当時は3本の裸線を使ったモールス信号を使用して閉塞運転が行われました。この時から、列車の運転保安に関わる情報伝達を担う信号通信システムが誕生したとされます。

電話が初めて設定されたのは、1956年の近畿鉄道の特急電話とされています。1960年には国鉄の東海道本線の特急列車にも採用されました。現在では、新幹線の全列車に採用されています。

鉄道電話の仕組み 

鉄道における有線通信システムの一つが鉄道電話とされています。公衆回線とは独立した通信網が構築されているのが特徴です。多くの鉄道事業者は、自営で通信網の設備・管理・運用などを行っています。通常時だけでなく、災害時でもすばやく情報伝達ができるように工夫されています。また自営の通信網だけではなく、通信事業者の専用回線を利用して通信網を構築しているケースもあります。現在ではほぼ全線にわたり、メタルケーブルや同軸ケーブル、光ケーブルなどのデータ通信網が構築されています。主な有線通信システムには以下が挙げられます。

指令電話

指定電話は、指令室と各駅、現場事務所、変電所などと直接通話を行うための電話網や設備を指します。列車運行に関わる指示や情報を正確に伝えなくてはならないため、一般電話の通信網とは別に構築されています。

鉄道事業者によっても異なりますが、列車の運行に関する輸送指令、電力設備に関する電力指令、信号通信設備に関する信通指令などがあり、指令ごとに別の回線が使われています。近年では、IP電話機なども導入されました。

沿線電話機

一定間隔ごとに鉄道沿線に設置された電話機のことです。沿線電話機には指令電話回線が使用されており、主に保守作業員が作業時や緊急時などに直接通話が可能となっています。さらに緊急時には、乗務員が地上に降りて連絡用に使用する場合もあります。

主な有線通信技術

鉄道における有線通信システムは、複数の有線通信技術が組み合わさって構成されています。主な技術には以下が挙げられます。

通信線路

通信線路には、メタルケーブル、同軸ケーブル、光ケーブルなどが挙げられます。

メタルケーブル

メタルケーブルは、芯線径が0.65〜0.9㎜の平衡ケーブルが採用されています。2芯1組の線を2対ずつ、さらにそれを10対ずつまとめたユニット構造になったものが多いです。幹線系においては、芯線径が0.9㎜のものが多く採用されています。

同軸ケーブル

同軸ケーブルは、同軸輸送装置の基幹回線の通信線路として採用されていました。しかし近年では、光ケーブルが普及したためほとんど見られなくなりました。

光ケーブル

光ケーブルは近年、鉄道沿線にも多く導入されているケーブルとされています。メタルケーブルなどと比較して、送った信号の距離による減衰が少ないとされ、長い区間においても高速で大容量の情報伝達が可能になりました。さらに光ケーブルは、電線などの電磁的な誘導現象から起こる雑音などが入りにくいことから、変電所などの連絡や遠隔制御のための回線などにも導入されています。

搬送装置

鉄道事業者が自営で構築している通信網の中で、情報量の多い指令と拠点駅同士を結ぶことの多い回線網は、搬送装置などが用いられています。搬送装置は、メタルケーブルにFDM(周波数分割多重)やPCM(パルス符号変調)搬送装置が数多く用いられていました。1本のケーブルで伝送できる回線数が多くなり、伝送距離なども伸ばすことができたとされています。

さらに光ケーブルが普及するに伴って、光搬送装置の導入なども進められています。1983年に拠点間の基幹回線網に光通信が導入されました。当時の伝送速度は、6Mbit/sほどでしたが、現在ではDWDM(高密度波長多重)などの技術を取り入れることにより、10Gbit/sの回線網も導入されているといわれています。

無線通信システムも普及している

有線技術だけでなく無線システムも普及しています。無線通信システムは、当初は誘導無線方式、その後は空間波無線方式が導入されたとしています。JRグループでは主に以下の無線通信システムが採用されています。

固定無線通信システム

列車制御運行回線や連絡回線、営業管理システムなどの回線として活用されていました。近年では、光ケーブルによる通信網が普及したことから、光回線網のバックアップとして一部で使用されるのみとなりました。

移動体通信システム

鉄道では、列車の乗務員や沿線で作業を行う作業員との間でやり取りを行う必要があるとされています。そのための伝達手段として、無線などの移動体通信システムなどが導入されています。現在ではほぼ全ての列車に、走行している列車と地上との間でやり取りを行う列車無線システムが導入されています。

列車無線システムは、指令員と乗務員が連絡を行うための通信システムです。列車の運行に欠かすことのできない設備のため、高い信頼性と品質が求められています。新幹線の列車無線であれば、エリアの99.99%以上、伝送品質は全線の99%以上、接続率は99.9%以上などが求められています。列車無線システムは、空間波無線方式、漏えい同軸ケーブル方式、LCX方式などに分類されるとしています。

防護無線

在来線で異常が生じた場合に、周囲の列車に警報を発するシステムです。車上から車上への伝達を行い、防護無線を傍受した列車は、直ちに停止させる必要があるとされています。

新幹線においては、地上にいる作業員が異常を発見したら、地上から列車に対して異常を知らせるシステムが採用されています。

鉄道電話の現在

近年では、JRグループと関連会社の定額通信サービスである「JR電話サービス」などが登場しています。JR電話サービスは、大手通信キャリアのソフトバンクが提供しているサービスで、通信回数や距離、時間などに関係なく毎月定額で利用できるサービスとしています。全国どこからでも7桁のダイヤルで電話をかけることが可能です。さらに同一局番内であれば、相手先の加入番号を4桁ダイヤルするだけでつながるなど、利便性も向上しています。

JR電話サービスは現在、JRグループの各社や関連会社の隅々まで設置されています。そのため相手の担当部署にもすばやく電話をかけることができます。迅速に連絡したり、綿密な打ち合わせをしたりなど、さまざまなシーンで利用されています。

全国へつなぐことができる

JR電話サービスは全国のJRグループ各社や関連会社などに設置されています。

相手の局番号3桁と加入者番号の4桁の、合計7桁をダイヤルすることで通話が可能です。

また同一局番内であれば、相手先の加入者番号4桁をダイヤルします。

定額サービスの仕組み

JR電話サービスは、既に設定されているPBXなどを簡単に利用できるとしています。最終的な電話機そのものは、一般に市販されている電話機でも利用が可能です。PBX端末やビジネスフォンなどを利用している場合は、JR電話回線を組み込めば、JR電話サービスとNTT電話のどちらも利用できます。

また電話だけでなく、FAXにも利用できるとしています。JRグループ各社のFAXなどのJR電話回線に接続されているため、図面や資料の送信などに利用可能です。

オプションサービスも充実

JR電話サービスはオプションサービスも提供しています。主なオプションサービスには以下が挙げられます。

スイッチバック(100円(税抜)/1回線/月)

数台の電話機をグループ編成しておけば、グループにかかってきた電話を自動的に空いている電話機にまわす機能です。

自動着信転送(100円(税抜)/1回線/月)

離席時に、移動先の電話番号をあらかじめセッティングしておけば、自動的に電話が転送される機能です。

通話中着信(300円(税抜)/1回線/月)

通話中に他の着信があった場合、電話機のボタンなどを操作することで通話中の電話を保留にできます。さらにかかってきた電話に対応したあと、保留中の電話を再開可能です。

ホットライン(300円(税抜)/1回線/月)

ダイヤルしなくても受話器を上げるだけで、指定した相手を呼び出せる機能です。

ダイヤルイン

ソフトバンク交換機からダイヤルイン局線などを通し、PBXが収容された内線を直接呼び出せるサービスです。契約中の全回線を代表回線として利用できます。さらに電話機の増設などにも柔軟に対応できます。

鉄道電話の仕組みを知ろう

鉄道電話は、主に鉄道会社が電車と駅との連絡のために運営している電話網のことです。通常のビジネスフォンなどとはまた違った仕組みとなっているのが特徴です。

電話が普及する以前にはモールス符号などでやり取りがされていましたが、現在では光通信でやり取りができるようになりました。またJR電話サービスなどの定額制のサービスも登場しており、鉄道電話の利便性はますます向上しているといえるでしょう。