オフィス向けのインターネット回線工事の流れ・かかる期間とは?

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企業のオフィス移転や新規拠点の開設において、電気や水道といったライフラインと同様、あるいはそれ以上に重要度を増しているのが「インターネット回線」の確保です。クラウドサービスの普及やWeb会議の常態化、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、安定した通信環境は業務遂行の生命線そのものとなりました。

しかし、オフィス向けの回線導入は、家庭用のインターネット契約とは比較にならないほど複雑な工程を伴います。ビルの構造上の制約、管理会社やオーナーとの権利関係の調整、セキュリティを考慮したネットワーク設計など、クリアすべき課題が山積しているからです。

本記事では、オフィス向けインターネット回線工事の具体的なプロセス、所要期間の目安、そしてトラブルを回避するために事前に確認すべき重要事項について紹介します。

 


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オフィス向けのインターネット回線の種類

オフィスで利用されるインターネット回線は、企業の規模や業務内容、予算によって最適な選択肢が異なります。一般的には光回線が主流ですが、用途に応じて「専有型」や「モバイル回線」を選択、あるいは併用するケースも増えています。それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに合致したものを選定しましょう。

 

一般的な光回線(共用型)

多くの企業が導入しているのが、光ファイバーを利用したブロードバンド回線です。NTT東日本・西日本の「フレッツ光」や、それをプロバイダとセットにした「光コラボレーション」などが該当します。

最大の特徴は、1本の光ファイバーを複数のユーザー(近隣のビルや同じビル内のテナント)で共有する点です。そのため、コストパフォーマンスに優れていますが、利用者が集中する時間帯には通信速度が低下する可能性があります。一般的な事務作業やWeb閲覧が中心のオフィスであれば、十分な性能を発揮します。

 

専有型回線(帯域保証型・ダークファイバーなど)

「専有型」とは、自社専用の光ファイバーを局舎からオフィスまで直接引き込むタイプや、通信帯域を保証するタイプの回線です。他社の利用状況に影響を受けないため、常に安定した高速通信が可能となります。動画配信事業者や、大規模なサーバーを社内に設置する企業、数百名規模のオフィスなどで採用されます。

 

モバイル回線

光回線のような物理的なケーブル工事を行わず、無線通信(5GやLTE)を利用してインターネットに接続する方法です。据え置き型のホームルーターやモバイルWi-Fiルーターがこれにあたります。

最大のメリットは、機器が届けばすぐに利用開始できるスピード感です。光回線の工事が完了するまでの「つなぎ」として利用したり、万が一の回線トラブルに備えたバックアップ回線として契約したりするケースが多く見られます。

 

オフィス回線工事の流れ

オフィスへの回線導入は、単に申し込めば良いというわけではありません。ビル管理者や施工業者など、複数の関係者との調整が必要です。ここでは、申し込みから利用開始までの標準的な流れを紹介します。

 

①事業者選び

まずは自社の利用規模に合わせて回線事業者とプロバイダを選定します。この際、単に「安いから」という理由だけで選ぶのは危険です。「固定IPアドレスが必要か(VPN構築やサーバー公開のため)」「サポート体制は平日のみか24時間対応か」「電話回線(ひかり電話)も同時に申し込むか」といった要件を明確にします。複数の代理店や事業者から見積もりを取り、比較検討を行いましょう。

 

②現地調査

申し込み後、最初に行われる重要な工程が現地調査です。回線事業者の担当者が実際にビルを訪問し、光ケーブルをどのように引き込むかを確認します。この調査には、テナント入居者(申込者)の立ち会いが必要な場合が多く、ビルの管理会社にも解錠を依頼しなければなりません。

 

③配線ルート確認

現地調査の結果をもとに、具体的な配線ルートを確定させます。基本的には既設の配管を利用しますが、配管が破損していたり、すでに他のケーブルで満杯だったりした場合は、新たなルートを検討します。場合によっては、エアコンのダクトを利用したり、壁に穴を開けて引き込んだりする特別な工事が必要になるケースもあります。

 

④工事日の調整

ルートが確定し、工事が可能であると判断されたら、具体的な工事日を決定します。この際、ビル管理会社やオーナーへの「工事実施の許可」が必須です。工事の日程だけでなく、作業内容についても事前に承諾を得ておかなければなりません。特に土日祝日の工事や、夜間工事を指定されるビルもあるため、管理規則を事前によく確認しましょう。

 

⑤設備工事(ケーブルの引き込み)

工事当日、作業員が訪問し物理的な配線作業を行います。作業は大きく分けて「屋外工事」と「屋内工事」の2つです。

 

・屋外工事

電柱からビルのMDF室まで光ファイバーを引き込む(すでに引き込み済みの場合は省略されることもあります)。

 

・屋内工事

MDF室から、テナント室内のルーター設置場所まで光ファイバーを通す。

 

オフィス内では、天井裏やOAフロアの下を通して、指定された位置に光コンセントを設置します。

 

⑥LANやWi-Fiの構築

回線業者の工事は、通常「ONU(回線終端装置)」の設置までです。そこから先の、社内ネットワーク構築は自社で行う必要があります。

 

・ルーターの設定(プロバイダ情報の入力)

・LANケーブルの配線(各デスクへの島ハブ設置など)

・Wi-Fiアクセスポイントの設置と設定

・ファイアウォールやUTM(統合脅威管理)の設置

 

これらは回線工事と同日、あるいは直後に実施できるよう手配します。

 

⑦テスト

全ての機器が接続されたら、最終的な動作確認を行います。Webサイトへのアクセス速度、Wi-Fiの電波強度、プリンターや複合機との接続確認などを実施します。問題なく通信ができることを確認して、全ての工程が完了となります。

 

インターネット回線工事にかかる期間は?

「申し込み後いつから使えるようになるのか」は、移転プロジェクトのスケジュール管理において最も重要な点です。時期によって異なりますので、「通常期で1ヶ月、繁忙期で2ヶ月以上」を目安に考えると良いでしょう。

 

時期による変動

回線工事の混雑状況は、企業の決算や人事異動の時期と密接に連動します。

 

・繁忙期(2月〜4月、9月〜10月)

企業の移転や新設が集中するため、工事の予約が非常に取りにくくなります。申し込みから現地調査までに2週間、そこから工事日決定までさらに1ヶ月以上待たされるケースも珍しくありません。この時期に工事を予定している場合は、可能な限り早めに申し込みましょう。

 

・通常期(上記以外)

比較的スムーズに進みますが、それでも申し込みから開通までは最低でも2週間〜1ヶ月程度は見ておくべきです。

 

工事前に確認しておくべきこと

工事当日になって「作業ができない」「追加費用が発生する」といったトラブルを防ぐため、事前に確認・準備を済ませておくべき項目があります。これらは回線業者任せにせず、契約者自身がチェックしましょう。

 

入居するビルなどの制限やルール

賃貸オフィスの場合、原状回復義務や工事区分(B工事・C工事など)の取り決めが厳格です。

 

・ビス留め・穴あけの可否

壁や床への固定のためにビス(ネジ)を使っても良いか。

 

・作業時間の指定

平日の日中に工事をして良いか、あるいは土日・夜間限定か。

 

これらの確認を怠ると、作業員が到着しても工事に着手できず、再調整となりキャンセル料が発生することもあります。

 

電源や配線のルート

ONUやルーターを設置する場所には、必ず電源が必要です。特にMDF室から距離がある場合や、デスクのレイアウトが決まっていない場合は注意が必要です。

 

・コンセントの数と位置

通信機器用(ONU、ルーター、ハブなど)に十分な数のコンセント口があるか。タコ足配線は火災リスクや通信不安定の原因になります。

 

・OAフロアの有無

床下に配線を通せるOAフロア構造になっているか。なっていない場合は、配線モールなどを使ってケーブルを保護する必要があります。

 

セキュリティ対策が万全か

家庭用とは異なり、オフィスでは機密情報や顧客データを扱います。単にインターネットにつながれば良いというわけではありません。

 

・情報セキュリティ機器の導入

ルーター機能だけでなく、不正アクセスやウイルスを防ぐUTM(統合脅威管理)の導入を検討しましょう。

 

・ゲスト用Wi-Fiの分離

来客用と社内業務用のWi-Fiネットワーク(SSID)を分け、外部の人が社内サーバーにアクセスできない設定にする必要があります。

 

・VPNの要否

リモートワークや他拠点との通信を行う場合、固定IPアドレスの取得とVPNルーターの選定が必要です。

 

まとめ

オフィスへのインターネット導入は、単なる設備工事ではなく事業運営の基盤を築く重要なプロジェクトです。ビル特有の物理的な制約や複雑な権利関係、さらには繁忙期における工事業者のスケジュール確保など、想定外の要因で開通が遅れるリスクは常に潜んでいます。だからこそ、物件契約と同時に速やかに回線事業者へ相談し、ビル管理側とも密に連携を取りながら進めることが成功の鍵となります。万が一の遅延に備えたバックアップ策も視野に入れつつ、余裕を持ったスケジュール管理で快適な通信環境を整備してください。