クラウド電話にデメリットはある?クラウド電話導入のポイント
従来からの企業の電話システムとして広く普及しているビジネスフォンを、クラウド環境に置き換えて使う「クラウド電話」。近年、画期的な電話システムとして話題に上がることも多いクラウド電話ですが、基本的にはビジネスフォンと同じく、数十台以上の規模で電話を組織的に使う場合に役立つシステムです
クラウド電話は、ビジネスフォンの仕組みを踏襲しながらもクラウド化したことで利便性は大幅に向上し、より便利に、より低コストでの運用ができると話題のシステムですが、もちろん便利な反面デメリットがあることも否めません。
今回は、クラウド電話の利用に際して考えられるデメリットに焦点を当てて解説しつつ、クラウド電話は本当に便利なのか、多くの企業が導入するべきものなのかを解き明かしていきます。
クラウド電話とは?
最初に、クラウド電話の仕組みについて簡単に解説しておきましょう。
クラウド電話は、冒頭でもふれたように、企業において長年普及してきた固定電話による電話運用の代表的存在である「ビジネスフォン」の仕組みを踏襲しつつ、その構造を大きく変えたことで利便性を大きく高めたシステムです。そのため、その仕組みを理解するには、まずはビジネスフォンの仕組みから説明したほうがわかりやすいでしょう。
ビジネスフォンは、企業で電話業務にあたっている方なら一度はその恩恵に与かったことがあるはずです。たとえば、自分では対応できない通話に関して専門の担当者に電話を取り次いだり、会社代表番号などの主な回線を複数の電話機で並行して発着信に使用したり。そうした普段何気なく行っている業務は、ビジネスフォンが導入されていないとできません。社内の電話機同士で内線通話することも、基本的にはビジネスフォンの仕組みが導入されていなければ不可能です。
ビジネスフォンは、社内に物理的に設置する「主装置(PBX)」という、システムの頭脳となる機械がその中核を担います。そしてその主装置に対して、固定電話回線と必要な分だけの固定電話機を有線で接続することで、頭脳である主装置が自動で、あるいは操作に応じて判断し、回線を割り当てたり、切り替えたり、共有したりしてくれます。これがビジネスフォンの仕組みです。
クラウド電話もまた基本はビジネスフォンの仕組みを踏襲しているので、主装置が電話機と回線の一元管理を担う面は変わりません。しかし、その主装置は、ビジネスフォンでは社内に物理的に設置されていましたが、クラウド電話では文字通りクラウド上、すなわちインターネット回線上に設置します。
そして、インターネット回線上に仮想的に設置された主装置に対して、複数の携帯電話やスマートフォンといった持ち運び可能なデバイスなどを有線だけではなく無線でも、インターネット回線を介して相互接続したものが、クラウド電話の仕組みです。つまり、「ビジネスフォンの仕組みをまるっとクラウド環境に置き換えたもの」と理解していただくのが近道といえるでしょう。
クラウド電話のデメリット
クラウド電話は、ビジネスフォンの仕組みをクラウド化・無線化したものと説明しました。しかし、もう1つ変わっているところがあり、それは「通話に使用する回線が電話回線ではなくインターネット回線である」ことです。
世間からは便利だ、画期的だともてはやされているクラウド電話ですが、基本的には普通の電話とは通話の伝送の仕組みが全く別のものになるので、内部的には実は非常に違いの大きいものになりますし、伝送の仕組みが異なることで、移行の際に生まれる不都合やデメリットもあります。
ここでは、クラウド電話のデメリットの代表的なものを解説していきます。
発信できない番号がある場合もある
クラウド電話は非常に便利な電話システムですが、弱点がないわけではありません。たとえば、多くのベンダーがIP電話専用回線を利用していることもあって、一般的な電話では発信できる電話番号に発信できない場合があることが代表的です。
その、クラウド電話で発信できない「場合もある」番号の主なものとしては、「緊急通報用番号」があります。警察署宛ての「110」や消防署宛ての「119」などが該当します。これは、現行のIP電話網の場合、市外局番付きの固定電話番号と異なり、位置情報が特定できず、最寄りの警察署や消防署が特定できないからです。
しかし、NTTのひかり電話を利用したクラウドPBXなどでは緊急通報用番号にも問題なく発信できますので、そうしたベンダーを選べば問題ありません。もし心配であれば、契約予定のベンダーに緊急通報用番号への発信ができるかを確認してみましょう。
また、その他にもいわゆる「短縮ダイヤル」の多くが発信できません。たとえば、時報の「117」や天気予報の「177」、故障調べの「113」など。しかし、緊急通報用電話番号と違い、スマートフォンで何でも調べられる時代に、これらの短縮ダイヤルに発信できないからといって困るかと言われると、正直あまり困らないのではないでしょうか。
通信の安定性がインターネット回線に依存する
クラウド電話では、先ほども説明した通り、インターネット回線による通話を行う電話システムである以上、企業でのネットだけでなく電話もインターネット回線に一本化されます。そのため、クラウド電話の通信の安定性はインターネット回線に依存することとなり、データ通信においてトラフィックが増大するとその分クラウド電話の通信は不安定になるリスクがあります。
こればかりは仕方のないことではありますが、通常のネットサーフィンやメールや文書など頻繁に扱う程度のデータ量であればそこまで問題にはなりません。とはいえ、大容量の写真・動画や設計資料といったものを頻繁にやり取りする会社であれば、ある程度ネット環境の強化は必須になります。
しかし、通信環境については今後、5Gの導入で4Gとは比較にならないデータ容量を短時間で送受信できるようになりますし、同時接続台数も飛躍的に増加しますので、5Gの進化と共にクラウド電話の通信安定性や利便性は飛躍的に向上するといわれています。
なので、このデメリットももう数年耐えることで解決するかもしれません。
クラウド電話はデメリットよりメリットが大きい!
このように、クラウド電話にはデメリットもありますが、以上のようなデメリットの内容を見てみると、特段気にするほどでもない、無視できる程度のデメリットでは、と思った方も多いのではないでしょうか。正直、これから述べるメリットに比べれば、デメリットは霞んで消えてしまうくらいのものです。
緊急通報用番号に発信できないのは少々不安ですが、先ほども説明した通り、ベンダーによっては緊急通報用番号に電話ができるサービスもあります。そもそも、緊急通報が必要な有事などそう頻繁に起きるものではないですし、無理に会社の電話で発信せずとも、個人の携帯電話から発信すれば済むことです。クラウド電話を導入するとインターネット回線に負荷がかかるのでは、という不安もあるでしょうが、正直音声パケットの送受信にそこまでの大きなトラフィックは発生しません。
ここでは、クラウド電話のデメリットも霞んでしまうほどの、クラウド電話がもたらす非常に大きなメリットを4つほど紹介します。
コストが大幅に削減できる
クラウド電話は、世間でもよく言われている通り、コストが大きく削減できるというメリットで契約数を伸ばしてきたと言っても過言ではないくらい、既存の企業向け電話システムと比べるとコストが大幅に安く済みます。
クラウド電話では、従来のビジネスフォンのようにシステムの要となる「主装置(PBX)」を社内に設置する必要がありません。また、電話機も主装置に対応した純正モデルではなくとも使えますし、既に支給されている社用スマホを転用して導入できます。主装置を設置するだけでも数十万~数百万のコストが、また電話機をそろえるのにも1台あたり数万のコストがかかっていたビジネスフォンに比べると、クラウド電話の初期費用は高くても数万円程度と、そもそもの導入コストが非常に安価です。
そして、クラウド電話では、主装置がクラウド上にあることを生かし「場所を問わずに運用できる」というこれまでには考えられなかった大きなメリットを生み出しました。
これによって、「離れた別拠点同士でも、海外拠点との間でも内線通話や内線転送が行える」という新たな利便性を獲得しました。従来のビジネスフォンでは外線や国際電話を使っていた局面でも内線通話ができることで、通話料も大幅削減が可能ですし、NTTなどの電話転送サービスを使わずとも電話転送が内線転送でできるので、転送にかかる通話料もカットできます。そもそも国内通話料も全国一律で従来の固定電話に比べて5分の1ほどの料金設定となっているのも大きいでしょう。
いつでもどこからでも固定電話番号で発着信できる
クラウド電話は、ビジネスフォンと同じように回線の共有が可能なので、会社代表番号などの固定電話番号を使った発着信が可能です。それに加えて、先ほども説明した通り、クラウド電話の「場所を問わずに運用できる」メリットを掛け合わせることで、「いつでもどこからでも固定電話番号で発着信できる」という劇的に便利な機能を生み出しました。
「会社にいなくても会社の電話番号が使える」のです。外出先にいても、出張先にいても、タクシーで移動中でも、会社名義の電話番号で仕事上必要なやり取りがいつでもできるというのは、ちょっとした空き時間を使って連絡が取り合えるので、業務効率が飛躍的に向上します。
電話取次ぎや伝言の手間が省ける
ビジネスフォンのように、拠点に設置された主装置と固定電話機が有線で繋がれた運用では、会社にいなければ会社用の電話が使えません。会社代表番号での受発信、内線通話、電話の取次ぎなど必要な電話応対をする際には必ず「会社にいること」が必要になります。
営業先・取引先など外出先にいる場合や出張中など会社を離れているときには、会社の電話番号を使った電話が一切できませんから、会社代表番号での折り返しが必要な場合はわざわざ会社に帰社しなければなりません。また逆に内勤の方は、担当者が外出していると電話の取次ぎができないので、電話相手から名前や伝言を控えて、それを担当者帰社次第直接伝えるか、急ぎの場合は担当者の携帯電話宛てに外線で電話して伝えなければなりませんでした。
しかし、クラウド電話であれば、インターネット回線さえ繋がればどこにいても会社代表番号での電話対応や内線通話が行えますので、外にいる間も携帯電話やスマートフォンを使って必要な連絡は直接行えますし、内勤者は直接会社から担当者の携帯へ電話の取次ぎができますので、伝言や取次ぎの手間が省けて負担軽減につながります。
複数拠点で電話番号を共有できる
クラウド電話では、すでに説明したように拠点が複数あろうと場所に関係なく、場所の制限を受けずに運用ができます。そのため、拠点が複数あったとしても、場所を跨いで同じ会社代表番号を一律で使用することが可能です。問い合わせ窓口など着信が多数来る電話番号を1つに統一できると、組織運営が非常にスマートになりますし、外から見てもシンプルでわかりやすくなります。
このように会社の窓口を一本化し、着信設定を会社の組織運営の都合に合わせて細かく設定しておけば、たとえば別の拠点の社員たちが東京本社宛ての問い合わせを丸ごと対応することも可能になりますので、コールセンターシステムの増設も簡単です。
そして、万が一災害などで特定の拠点の通信が機能しなくなったとしても、別拠点で問題なく電話応対を引き受けることができるなど、リスクヘッジやリスク分散にもつながり、非常に合理的です。
クラウド電話導入のポイント
以上、クラウド電話の大きな大きなメリットを紹介しました。
正直デメリットがほぼ消え去り、すぐにでも導入したくなったという方も少なくないのではないでしょうか。
ここでは、クラウド電話導入にあたって意識しておくべきポイントをいくつか紹介します。
必要な機能を確認しよう
クラウド電話には、便利な機能が沢山あり、ビジネスフォンと仕組みはほぼ同じなのでビジネスフォンで使える機能は大抵使えます。また、別途オプション料金を払うことでもっと便利な機能も使えるようになります。必要な機能は契約前に事前に経営陣とシステム管理者で協議するなどして確認しておき、ある程度絞り込んでおくようにしましょう。
現在利用中の電話番号を使用できるか確認しよう
クラウド電話は場合によって発信できない番号があると、デメリットのところでも説明しました。しかしそれに加えて、クラウド電話ではこれも「場合によって」なのですが、発信する電話番号として使えない番号があるサービスもあります。
これは、発信できない番号のところでも説明したのと同じく、ベンダーによって違う種類の回線を使っているからです。その回線の種類によっては、たとえば現在固定電話で利用している電話番号が発信番号として利用できない場合があるのです。
仮に現在、ビジネスフォンで運用している企業場合、たとえば東京「03」大阪「06」などの市外局番がついた、会社名義の固定電話番号を利用しているはずです。こうした固定電話番号は「0ABJ型」番号といいますが、このような固定電話番号を引き継いで使用できないクラウド電話を導入してしまうと、会社代表番号を固定電話からIP電話専用の「050」で始まる番号に変えなければならなくなります。
市外局番によってある程度の位置がわかる固定電話番号は、取得するのにもある程度のお金と手間がかかり、企業にとっては一定の社会的信用をも担保しますので、安易に変えてしまうことはおすすめしません。無料で簡単に取得できる「050」番号に変えて、無碍に信頼を失うこともないでしょう。
そうした大切な固定電話番号を失いたくない・引き継いで使用したい場合は、必ず既存の電話番号を引き継いで使用できるか、ナンバーポータビリティは行ってくれるのかといったことは必ず契約予定のベンダーに確認するようにしましょう。
プランを変更した場合の月々のコストも検討しておこう
企業向け電話システムは、一定の数の回線を契約して終わりではありません。多くの場合、年単位あるいは月単位で状況は刻々と変化していくものです。利益を得続けて経済活動を行うわけですから、都度必要な回線数は変わっていきますし、事業の拡大、オフィス(拠点)の増設も視野に入れなければなりません。
クラウド電話では、契約する回線数の変化に関してビジネスフォンよりはるかに柔軟に対処できるという強みがありますが、必ずしも料金設定が柔軟になっているサービスばかりとは限らず、たとえばプラン建てが明確なものでは、プラン変更を求められることもあります。
契約しているプランによっては、プラン変更を行うことで一気に値段が上がるものもあるので、長期的な運用を前提とするなら、こうしたプラン変更時を見据えた月々のコスト変動をしっかりシミュレーションしておきましょう。
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複数電話の一斉着信もできますが、特定の電話機だけ鳴らすことも可能です。細かな着信ルールの設定やアナウンス設定が可能です。またIVR・ガイダンス機能やボイスウィスパリング機能など、コールセンターなどで役立つオプションもございます。
▼1分でわかるナイセンクラウド
最低契約期間は1か月ですので、気軽に導入できるのも特徴です。詳しい料金は自動見積りや個別見積りでご確認ください。
クラウド電話はデメリットを気にする必要なし!
クラウド電話のデメリットとメリットを比較し、クラウド電話導入の際の注意点も含めて解説しました。
基本的に本記事内で解説した通り、デメリットはある程度対応・対策が可能なものが多いです。よってあまり気にすることはありません。現在企業向け電話システムとして導入するなら、特に沢山の拠点を持っていて社員が頻繁に外出や出張に出かける会社の場合には、場所を問わずに運用できるクラウド電話をおすすめします。