固定電話番号ポータビリティ(LNP)とは?どんな制度なのか解説します

2025年3月21日専門用語集

ビジネスフォンを導入する際に知っておきたいのが、固定電話番号ポータビリティ(LNP)制度です。

固定電話番号ポータビリティ(LNP)制度は、現在使っている電話番号のまま事業者を変更できる制度を指します。電話番号が変わらないので、オフィスを移転しても「新しい電話番号を知らせる」という手間を省けます。

では、固定電話番号ポータビリティ(LNP)制度を利用するにはどうしたら良いのでしょうか。本記事では、固定電話番号ポータビリティ(LNP)の概要や利用できる条件などをご紹介します。

固定電話番号ポータビリティ(LNP)とは

固定電話番号ポータビリティ(LNP)とは、固定電話でも番号を変えずに会社を変えられる制度です。LNPは「Local Number Portability」の略称です。制度自体は、2001年3月から行われています。光コラボへの転用や通信サービスの変更、光コラボ事業者間の乗り換えを行った際に、同じ番号をそのまま利用することができます。

電話番号を変更すると、電話番号が印字されている封筒や名刺、ホームページ、顧客への連絡など、さまざまな更新が必要です。また企業の場合、登記の変更も必要です。

固定電話番号ポータビリティ(LNP)を利用すれば、番号を変更せずに電話業者を変更することができます。

 

双方向番号ポータビリティとは

双方向番号ポータビリティとは、固定電話の電話番号を変更することなく、通信事業者を変更することができる仕組みです。

従来の固定電話番号ポータビリティ(LNP)は、例えばNTTの加入電話で取得していた電話番号を変えずにKDDIへ変更することは可能ですが、逆はできませんでした。KDDIで取得した電話番号を変えずにNTTへ変更はできない、いわゆる片方向番号ポータビリティです。

また、これまではNTT以外の事業者、例えばKDDIとSoftBank間で電話番号を変えずに移動することもできませんでした。

しかし、2025年1月より双方向番号ポータビリティが開始されたことで、NTTとNTT以外の事業者間で自由に電話番号を変えずに行き来できるようになったのです。

 

さらにこれまでNTT東日本・西日本の加入電話、INSネットを利用していて、ひかり電話もしくは他事業者に変更する場合、同一番号で移転可能な範囲は同一収容局のエリア内のみでした。しかし、双方向番号ポータビリティ開始以降は、範囲が同一番号区画のエリア内にまで拡大されます。

例えば、東京23区では1つの区に複数の収容局があるのも珍しくありません。これまでであれば、同じ区内への移転であっても収容局が異なれば、同一の電話番号は使えません。しかし双方向番号ポータビリティにより、東京23区内であればどこへ移転しても同じ電話番号のまま移転が可能です。

 

固定電話番号ポータビリティ(LNP)を利用できる電話番号

2025年1月より開始された双方向番号ポータビリティにより、番号ポータビリティ(LNP)を利用できる電話番号が増えています。

 

双方向番号ポータビリティが開始される以前、番号ポータビリティが利用できた電話番号は次のとおりです。

「NTT加入電話を利用しているケース」

・NTT加入電話→NTTひかり電話

・NTT加入電話→KDDI auひかり電話

・NTT加入電話→SoftBankおとくライン

 

「NTTひかり電話で取得して電話専用番号をNTTからひかりコラボへ転用するケース」

・NTTひかり電話→光コラボひかり電話

・光コラボひかり電話A社→光コラボひかり電話B

 

ただし、NTTひかり電話で取得した電話専用番号をNTTからひかりコラボへ転用するのは、厳密には番号ポータビリティではなく「転用」「事業者変更」などに含まれる仕組みです。そのため、転用や事業者変更による引き継ぎを行う際には、違約金が発生する可能性もあります。

また、現在、利用している電話番号を引き継ぐ際には、申し込み時にひかり電話を使用していることを申告しなければなりません。

以上を踏まえ、双方向番号ポータビリティによって新たに利用できるようになった電話番号は次のとおりです。

 

「NTTひかり電話で取得した電話番号」

・NTTひかり電話→KDDI auひかり電話

・NTTひかり電話→SoftBankおとくライン 

 

「NTT以外の電話会社で取得した番号」

・KDDI auひかり電話→SoftBankおとくライン

・KDDI auひかり電話→NTTひかり電話

・SoftBankおとくライン→NTTひかり電話

・SoftBankおとくライン→KDDI auひかり電話

 

以上のほか、NTT東日本・西日本のひかり電話とKDDI、SoftBank以外の固定電話サービス提供事業者(固定電話サービス・IP電話サービス)間、KDDI、SoftBankを含む固定電話サービス提供事業者(固定電話サービス・IP電話サービス)間の電話番号も追加されています。

 

固定電話番号ポータビリティ(LNP)が利用されるケース

固定電話番号ポータビリティ(LNP)はどんなケースで利用されているのでしょうか。ここでは、固定電話番号ポータビリティ(LNP)の利用されるケースを2つご紹介します。

 

番号を変えずにオフィスを移転したい

電話番号を変えずにオフィスを移転したい場合は、固定電話番号ポータビリティ(LNP)の利用がおすすめです。電話番号が変わると、顧客に電話番号が変わったことを伝えなくてはいけないため、手間がかかります。また、名刺や封筒、ホームページなど、会社の電話番号が記載されているものは全て変更しなくてはいけません。そのため、コストと時間が必要になります。番号を変えずに移転できれば、これらの手間を削減できるため大きなメリットといえるでしょう。

ただし、遠方への引っ越しによって、管轄局や収容局が変更になる場合は電話番号を変更しなくてはいけないので注意しましょう。

 

光コラボ間で事業者を変更したい

現在、光コラボレーションを利用していて別の光コラボレーション事業者へ乗り換える場合も、固定電話番号ポータビリティ(LNP)を利用することができます。この制度は2019年7月から始まりました。実施されるまでは、別の光コラボレーション事業者に乗り換えるには、「アナログ戻し」という複雑な手順が必要でした。しかし現在は、この面倒な手続きは不要になっています。

事業者変更は、新たに工事を行うことなく実施することができます。これは機器や回線を転用できるためです。変更は以下の手順で行います。

 

1.事業者変更承諾番号を取得し、光コラボ事業者Aを解約する

事業者変更を行うには、事業者変更承諾番号が必要です。現在契約している光コラボ事業者に連絡し、事業者変更承諾番号を受け取りましょう。現在契約している光コラボ事業者から、事業者変更承諾番号を受け取り、新規に申し込む事業者への事業者変更の手続きが必要です。

2.A社からB社に変更する場合、光コラボ事業者Bと契約する

3.事業者Aからフレッツ光に変更する場合、NTT西日本とプロバイダーと契約する

 

新たに契約する事業者と契約します。NTT西日本の付加サービスに契約している場合は、NTT西日本へ連絡し、情報開示許諾の手続きが必要な場合があります。

手続き後は、現在契約している光コラボ事業者と新しく申し込んだ事業者の間で手続きが行われます。その後に事業者変更となります。

事業者変更すると、現在契約しているコラボ光は解約となり、新たに申し込んだコラボ光事業者やフレッツ光と契約になります。そのため、契約先は現在契約している光コラボ事業者から新たに申し込んだ光コラボ事業者、またはNTT西日本に変更されるので確認しておきましょう。

また現在使用している料金も変更になるため、現在利用している料金と新たな利用料金を確認しておくことをおすすめします。

 

固定電話番号ポータビリティ(LNP)が利用できないケース

固定電話番号ポータビリティ(LNP)は便利なサービスですが、利用できないケースもあります。ここでは、固定電話番号ポータビリティ(LNP)が利用できないケースについて解説します。

 

管轄・収容局が異なる住所へ引っ越しする場合

固定電話番号ポータビリティ(LNP)は、「事業者を変更する」場合に電話番号を引き継げるサービスです。そのため、都道府県をまたいだ引っ越しなど、遠方に引っ越す場合は電話番号が変更されます。

具体的には、NTT東日本とNTT西日本の対応エリアをまたいだり、管轄局や収容局が変更になったりする場合です。注意する必要があるのは、同じ町内であっても主要局の管轄が変わる可能性があります。そのため、NTTの管轄エリアがどこに該当するのかは、あらかじめNTTに確認するのがおすすめです。

 

IP電話番号(050番号)の引き継ぎ

050から始まるIP電話番号は、光電話相当サービスや一般加入電話などへ番号を引き継ぐことはできません。他社に乗り換えようとする自発的な行動だけでなく、IP電話の事業者がサービスを停止して、乗り換えざるを得ない場合でも電話番号を変えなくてはいけません。

ただし、以前加入していた電話からIP電話に引き継いだ番号であれば、他社のIP電話に乗り換えても同じ番号を使用することができます。

 

固定電話番号ポータビリティ(LNP)と携帯電話番号ポータビリティ(MNP)の違い

固定電話番号ポータビリティ(LNP)制度と似ているものが、モバイルでのポータビリティ制度「MNP(Mobile Number Portability)」です。

これらの違いは明確で、固定電話向けのものが固定電話番号ポータビリティ(LNP)、携帯電話向けのものが携帯電話番号ポータビリティ(MNP)となっています。

以前から携帯電話番号ポータビリティ(MNP)では双方向型の番号ポータビリティが行えていましたが、長らく固定電話では片方向型の番号ポータビリティしか行えませんでした。しかし現在では固定電話番号ポータビリティ(LNP)も双方向型となっています。

 

番号ポータビリティ(LNP)の手順

番号ポータビリティを行う手順は次のとおりです。

 

1:移行先の固定電話事業者に申し込みを行う

移行したい固定電話事業者に番号ポータビリティの申し込みを行います。申し込みの際は、契約中の事業者名、契約名義人、設置場所となる住所、契約サービスの内容、現在の固定電話番号などを伝える必要があります。

 

2:移行日時の決定

移行先の固定電話事業者から番号ポータビリティ可否の連絡を受け、可能であれば移行日を決めます。

 

3:利用開始

移行日に移行先の固定電話事業者が回線の切り替えを行い、担当者からの連絡を待って利用を開始します。

 

番号ポータビリティについて知ろう

固定電話番号ポータビリティ(LNP)は電話番号を変えずに他の事業者に乗り換えられる制度です。固定電話の番号をそのまま継続して使用することができるため、顧客に新たな電話番号を伝える手間やコストを削減できます。ただし、制度が利用できるケースは条件があるため、該当するかどうかあらかじめ確認しておくことをおすすめします。