VoIPの仕組み│VoIPのメリットと企業が導入すべき電話ツールとは

2021年5月31日VoIP

電話は企業でも個人でも、従来は電話回線を利用した通話が一般的です。しかし、「電話回線を利用しない電話」もまた既に普及しているということをご存知でしょうか。例えば「IP電話」がいい例です。

「電話回線を利用せずに電話とはどういうこと?」と思う方も少なくないかもしれませんが、簡単にいうとインターネット回線を利用した通話技術を使っての通話を意味します。この通話技術を「VoIP」と呼びます。

今回は、この新しい時代に向けて普及が進む「VoIP」の仕組みとメリットを解説します。また、こうしたVoIP技術の仕組みを知っていただいたうえで、本当に企業が導入するべき電話ツールについても後半で紹介します。より便利で低コストな電話システムの導入を検討中の企業担当者様にもきっと役立てていただけるでしょう。

VoIPの仕組み

冒頭でも軽く触れた通り、「VoIP」はインターネット回線を利用した電話のことですが、従来のように電話といえば電話回線を経由して成立するものだと思っている方は、「インターネットで電話?どういうこと?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

ここではまず、VoIPの仕組みについて解説していきます。VoIPとは何か、VoIPを構成する要素を簡単に説明したうえで、その具体的な仕組みに迫っていきますので、初めて知るという方でもわかりやすく理解していただけるはずです。

VoIPとは

冒頭でも軽く説明した通り、「VoIP」はインターネット回線を利用した通話技術を指す言葉で、「ブイオーアイピー、ボイップ、ボイプ」などと読みます。「Voice over Internet Protocol」を略した言葉で、「Voice」は勿論ここでは「通話」を意味し、「Internet Protocol」とは、インターネット回線を使った通信の規格や通信手順のこと。つまり、VoIPとは文字通りの言葉で「インターネット回線を使った通話」そのものなのです。

VoIPの構成要素

それでは、VoIPはどういったものを使った仕組みなのか、その構成要素を説明していきましょう。

VoIPを構成するのは、以下の3つです。

  • 端末
  • サーバー
  • IPネットワーク

インターネット回線接続の際によく聞く言葉ばかりだな、と思った方もいらっしゃるかと存じます。それも当然、VoIPというのは先ほども申し上げた通り、インターネット回線を経由して音声を届ける仕組みなので、いわゆるインターネットに接続するのとあまり変わらない要素を持ちます。

ここでは、以上に挙げた3つの構成要素それぞれを簡単に説明していきます。

端末

端末とは、もともとは電路における電流の出入り口を指す言葉ですが、情報化社会においては電話や通信における情報の出入り口となる部分、すなわち情報の入出力を担う装置のことを意味します。要するに電話における「電話機・受話器」、インターネットや電子メールにおける「パソコン・スマートフォン・携帯電話・タブレット等」のことです。特にVoIPの文脈においては、「IP電話(ソフトフォン)」「VoIPゲートウェイ」「パソコン」「スマートフォン」を意味することが多いです。

ノートパソコンやスマートフォン・タブレット・携帯電話といった持ち運び可能な端末に関しては、「スマートデバイス」「モバイルデバイス」というように呼ばれることから、単に「デバイス」とも呼びます。もともと「端末」と「デバイス」はまったく意味合いの違うものでしたが、スマートフォンの普及をきっかけに現在ではデバイスという言葉の意味合いが広がり、今ではほぼ「端末=デバイス」になりつつあります。

サーバー

インターネット関連の話でよく聞く「サーバー」とはどういったものか、実はあまりわかっていないという方も少なくないのではないでしょうか。

普段私たちが何気なく行っているインターネット上のWebサイトへのアクセスを別の言葉に置き換えると、「閲覧したいWebサイト内の情報を保管しているサーバーに対し、指定のURL(いわゆる「アドレス」)を打ち込むことで、Webサイトに含まれる情報(画像や文字など、サイトそのものも含む)をリクエストし、サーバーから情報を受け取っている」となります。

つまりサーバーとは英語で「提供者」を意味するように、所定のリクエストに対して要求通りの情報を引き渡す、あるいは閲覧できる状態にしてくれる(または閲覧できるための所定の操作や変換を行う)存在ということです。VoIPの文脈では「IP-PBX」や「ソフトスイッチ」といったものを指します。

昔、電話がまだ一部の人にしか普及していなかった頃には、電話の「交換局」というものがありました。その時代に所定の相手に電話をかけるには、まず交換局につないで交換手と呼ばれるスタッフに相手の電話番号を伝え、交換手が相手と発話者の回線を手動で接続することで通話が成立していたのです。サーバーはいわば、この交換手のような役割を自動で担っているようなものです。

しかし、特にVoIPでいうサーバーは、こうした比喩よりももっと重要な役割を担います。詳細は後述します。

IPネットワーク

VoIPの構成要素の中で、あまり聞きなじみのない言葉は「IPネットワーク」くらいでしょうか。しかし、普段接続しているいわゆる「インターネット」も「IPネットワーク」の1つなのです。

組織や個人が運用するネットワークを全世界規模で相互接続している公衆的・公共的大規模通信網であるインターネットは、あまりにも巨大すぎて意識されていませんが、VoIPの「IP」と同じ「Internet Protocol」を使った通信のうちのひとつです。

しかし、IPネットワーク=インターネットというわけではありません。IPネットワークには、「イントラネット」のように企業や組織内で完結している内部ネットワークもあれば、通信事業者によって自社内拠点間や顧客のみを結ぶ広域的なプライベートネットワークもあり、VoIPは後者にあたります

IPネットワークには、全世界からアクセス可能な情報を扱うネットワーク(インターネット)もあれば、顧客情報や機密情報が外部に漏れないように封鎖しているネットワークもあるのです。

VoIPの仕組み

それではいよいよVoIPの仕組みに迫っていきましょう。

VoIPの仕組みは、まず、発話者が発したアナログの通話音声(音声信号)を、端末(IP電話機・ソフトフォン・VoIPゲートウェイ)側でデジタルデータ(IPパケット)に変換・分割して、インターネット回線(IPネットワーク)を経由して相手方に伝送します。

この際、サーバーは上記の端末を認証し、端末が発信している電話番号をインターネット上の住所である「IPアドレス」に変換する役割も同時に担っています。つまり、ゲートキーパーのように、認証された端末や端末が発信する通信をしっかり相手方に通すための入り口の開閉を担うのがサーバー(音声サーバー)ということです。

そして、通信の伝送に使うIPネットワークには、音声信号を変換したIPパケットを優先的に制御したり、帯域保証を担ったりする役割があります。要するに、パケットをしっかりパッキングして音声品質を保証しながら相手に無事に届ける、物流業者のような役目を果たしてくれます。

最後に、サーバーの認証を経てIPネットワークにより無事に伝送されたIPパケットを、相手方の端末が再度通話音声として復元することで、相手にも聞こえるようにしているのです。

IP電話の種類

IP電話は先ほども説明した通りVoIPの一種で、「インターネット回線を使った電話」の代表例です。VoIPはどちらかというとIP電話等の仕組みを実現するための通信技術そのものを指し、IP電話は、そうしたVoIPの技術を利用した電話サービスや電話機を指すのが普通です。

IP電話には、大きく分けて2種類、「ハードウェアタイプ」と「ソフトウェアタイプ」があります。ここでは、この2種類のIP電話がそれぞれどういうものなのかを解説します。「ハードウェア型」もあれば、スマートフォンなど半無線でのモバイルデータ通信が可能なデバイスにアプリとしてインストールし、スマートフォンをIP電話機代わりに使うもの「ソフトウェア型」もあります。

VoIPには、電話番号が発行されるものと、同じアプリ間でしか受発信できない代わりに電話番号が発行されないものがありますが、一般に「IP電話」と呼ぶ場合は前者を指すのが一般的です。また、発行される電話番号については、「03」や「06」などの市外局番も使える「0ABJ型」と、IP回線専用の「050」で始まる番号しか発行されないものがあります。

ハードウェアタイプ

いわゆる「IP電話」といわれるものの中でも特にイメージしやすいのがこの「ハードウェアタイプ」ではないでしょうか。

ハードウェアタイプのIP電話の代表的な例は、固定電話機のような据え置き型電話機にインターネット回線を繋いだものです。従来の電話と同じような使い方を前提としていて、かつ回線はインターネット回線のみを使い、より低コストで電話運用をするのに向いています。

また、すでに設置されているアナログ電話機に「VoIPゲートウェイ」というルーターのようなものを接続することで、アナログ電話をIP電話に変えて運用できるという方法もありますが、これもハードウェアタイプのIP電話の一種です。

ソフトウェアタイプ

物理的にインターネット回線を引いて、据え置き型電話機に接続するハードウェアタイプに対して、ソフトウェアタイプというものもあります。

ソフトウェアタイプのIP電話は、インターネット回線につながったパソコンやスマートフォンなどの端末に「ソフトフォン」と呼ばれるソフトウェア型のIP電話をインストールすることで、パソコンやスマートフォンを介してIP電話を利用することができるものです。

「IP電話」と聞いてよく思い浮かぶイメージはハードウェアタイプのIP電話ですが、むしろ世間一般でそうとは意識させずに普及しているのはソフトウェアタイプのIP電話でしょう。たとえばLINEやSkypeといったアプリ間での無料通話機能も、ソフトウェアタイプのIP電話の一種です。

VoIP活用のメリット

VoIPをよく知らない人の中には、どうしてわざわざインターネット回線を利用した電話を使うのか、いまいちわかっていない方も多いかもしれません。しかし、実際にはVoIPを利用することで得られるメリットはたくさんあり、特に電話システムの運用に際してより身軽になりたいなら、すぐにでもVoIPを導入するべきです。

ここでは、VoIPを活用するメリットについて、主なものを3つ解説していきます。

インターネット回線があれば利用できる

VoIPを活用するのに必要な設備はインターネット回線だけ、という気軽さが一番の魅力です。

電話回線のみならずインターネット回線もまた生活に必須な通信インフラとなった今の時代では、インターネット回線を既に引いている会社が殆どでしょう。インターネット回線はどの道引く必要がありますので、特に電話システムを新たに導入する場合には、電話回線ではなくインターネット回線を利用したIP電話などを使ってインターネット回線のみに統一してしまうことで、より合理的かつ効率的な設備投資が可能になります。

昔は電話回線しかなく比較対象になるものがなかったので、なかなか実感しづらいところではあるかと存じますが、電話回線を引く手間と費用は思っているよりも大きなものです。アパートに一人暮らしの個人宅ならまだしも、特に企業が電話回線を引っ張り込むためには、膨大な工事費を必要とします。それを節約できるというのは、思っているよりも楽で快適です。

電話加入権が必要ない

固定電話には、「電話加入権」の購入が必要です。電話加入権とは、NTTの前身である日本電電公社が始めたもので、電話回線を引くための電線・電柱の整備費調達のために個人宅や企業等に「施設設置負担金」としてお金の負担をしてもらう代わりに、固定電話を引く権利を与えるというものです。

日本電電公社が民営化しNTTになった時には、この電話加入権の値段は72,000円と非常に高額でした。しかし、携帯電話の爆発的普及に伴って固定電話加入者が激減したこともあり、2005年3月より電話加入権の値段は36,000円、半額になりました。とはいえ、電話の運用方法が多様化した現在では、電話を引ける権利だけで36,000円もかかるのは正直高く感じてしまいますよね。

VoIPを活用すれば電話回線を引かずに済みますので、この電話加入権の購入費用も負担せずに済むというわけです。

費用を抑えられる

そもそもなぜわざわざインターネット回線を使って通話をするのか、冒頭から疑問に思っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、VoIPが話題になっている背景としては、「VoIPの方が、格段に通話料が安い」というわかりやすいメリットがあることが大きいでしょう。

固定電話の料金体系は、市外局番によって地域と番号を紐づけ、相手先の番号が紐づく地域への距離が長くなればなるほど通話料が高くなるというものになっています。反面、VoIPを活用した電話の場合では、距離に関係なく通話料が一律というのもありますが、そもそもの時間ごとの通話料がアナログ電話より格段に安いのです。

先ほども説明した通り、通話と通信で回線がインターネット回線に一本化できるというのも、費用削減に大きくつながる理由です。

本当に企業が導入すべき電話ツールはクラウドPBX

さて、VoIPの仕組みやメリットを一通り知っていただきましたが、個人であればIP電話でも十分です。しかし、特に企業においては企業特有の必須機能や電話システムの構築が必要になってきますので、単にVoIPを導入するだけではあまりその恩恵に与れないかもしれません。

企業の場合に限れば、本当に導入するべきは「クラウドPBX」でしょう。いきなり新しい言葉を出されても、と不安に思うかもしれませんが、このクラウドPBXは基本となる運用に関してはIPネットワークを用いたVoIPが基本となっていますので、どうかご安心ください。

ここでは、クラウドPBXとは何か、主なメリットを含めて解説していきます。

クラウドPBXとは

クラウドPBXとは、特に企業向け電話システムとして非常に画期的かつ便利なサービスとしてここ5年ほどで急激な成長を遂げており、大きな注目を集めています。そして、その機能や仕組みは、従来企業に広く導入されていた電話システム、いわゆる「ビジネスフォン」を継承しながらも、より便利かつ使い勝手の良いものにアレンジされているのです。

簡単に仕組みを説明しましょう。しかし、クラウドPBXの仕組みを理解するには、まず「ビジネスフォン」の仕組みを理解しなければなりません。

ビジネスフォンは、先ほども述べた通り、従来企業において広く導入されていた電話システムで、普段会社で私たちが何気なく行っている「(複数人が同時に行う)会社代表番号を使ったアポ取り」や「電話の取次ぎ」、社内の部署間での「内線通話」などを行うために必須となるシステムです。

ビジネスフォンの構成要素は3つ、「固定電話回線」と「固定電話機」、そして「主装置(構内交換機・PBX)」です。ビジネスフォンの場合では、まず「主装置」を会社拠点内に物理的に設置したうえで、企業に必要なだけの複数回線(外線・内線)と複数台の固定電話機をすべて有線で主装置に接続することで、回線の切り替えや割り当て等の制御を主装置が一手に担います。電話機側の操作で「保留」や「転送」が行えるのも、回線と複数の電話機がすべて中枢となる主装置に接続されているからです。

「クラウドPBX」も、仕組みとしてはこのビジネスフォンとほぼ同じです。しかしクラウドPBXの場合、中枢となる主装置を社内に設置せず、「クラウド上(インターネット回線上)に仮想的に設置された主装置を遠隔で利用する」といった形式を取ります。そして、遠隔地に設置された主装置に対し、電話機だけでなく、パソコン・スマートフォン・携帯電話などのデバイスをインターネット回線で相互接続することで、ビジネスフォンと同じ仕組みを再現しています。

クラウドPBXのメリット

ビジネスフォンの場合は、運用の中枢を担う主装置を会社拠点内に物理的に設置するので、構造上、自動的に電話システムが場所に縛られることとなり、内線通話や会社代表番号での発信を行うために会社にいなければなりませんでした。しかし、クラウドPBXはクラウド上の主装置とインターネット接続できる端末を用いた運用のため、場所の制限を受けずに便利な機能を使えます。

この「場所に縛られない」ことこそがクラウドPBXの最大のメリットです。クラウドPBXなら、たとえ会社にいなくても、会社用の電話番号で受発信出来たり、社員と内線通話を行えます。それだけではなく、「場所に縛られない」ことは思ったよりも大きな意味を持っています。

たとえば外線での問い合わせが来た際に担当者の持っている携帯電話宛てに直接取次ぎを行えるので、内勤者がわざわざ用件や伝言を控える手間がなくなります。そして移動中に電話を取ることも可能なので、社内にいたとしても、自由にフロアを行き来しながら資料や倉庫の商品在庫などを確認しながら電話応対ができます。

そして、内線通話に関してはもっと大きなスケールで効率改善や費用削減につながります。たとえば、従来であれば特定の拠点内でしか構築できなかった内線ですが、クラウドPBXなら数百キロ離れた支社など別拠点間でも内線が構築できますし、それどころか海外拠点とも内線を構築できます

固定電話の外線では利用時間帯や場所によって通話料金が加算されていましたが、クラウドPBXであれば離れた拠点や海外拠点の通話に外線や国際電話を使わずに済み、大幅な通話料削減につながります。

クラウドPBXなら「ナイセンクラウド」

ナイセンクラウドは、全国の市外局番、050番号、0120・0800に対応したクラウドPBXです。全国の複数拠点だけでなく海外拠点でも利用可能です。

基本機能として、詳細な着信ルールの設定や特定電話番号のブロック、留守電音声のメール送信などが利用でき、その他IVR・音声ガイダンス、ウィスパリング機能などの便利な機能も用意しています。

▼1分でわかるナイセンクラウド

>>ナイセンクラウドの詳細をチェックする<<

料金プランは企業規模に応じて3つのプランからお選びいただけます。内線数を増やしたい場合はお得な割引もあります。最低契約期間が1か月ですので、キャンペーンなどの実施により電話の多い時期だけ、内線数の多いプランをお選びいただくなど、柔軟な運用が可能です。具体的な料金は個別見積もり、もしくはサービスサイトの自動見積もり機能をご利用ください。

>>自動見積もり・個別見積もりを依頼する<<

VoIPの仕組みを把握してメリットを理解してから導入を

VoIPの仕組みや種類、導入に際するメリットについて詳細に解説しました。また、VoIPをより気軽かつ便利に導入するために、ビジネスフォンに代わる画期的な電話システムである「クラウドPBX」も紹介しました。

クラウドPBX以外にもVoIPを使ったサービスは様々ありますが、特に企業向けということであればクラウドPBXが最も便利で使い勝手がいいのは間違いありません。しかし、ビジネスフォンを使い続けてきた企業にとってはいきなりビジネスフォンをカットしてクラウドPBXに全とっかえというのも大変かもしれません。そうした時のために「VoIPゲートウェイ」というルーターのような機器を使うことで段階的に導入を目指すのも一つの手です。

当メディアではクラウドPBXに関しても、VoIPやVoIPゲートウェイに関してもいろいろな記事で発信していますので、ぜひ他の記事も見てみてください。