VoIPとクラウドPBX|VoIPゲートウェイとクラウドPBXを併用するメリットはある?

VoIP

インターネット回線を使った通話技術のことを「VoIP」と呼びますが、この言葉こそ知らなくとも、LINE無料通話やSkype、Zoomといった形でこの技術を使っている人は多いでしょう。

実はこうした通話のできるアプリでVoIP技術が用いられているのですが、「IP電話」を筆頭に、固定電話とのやり取りが可能なVoIPももちろんあります。そして、特に企業での電話運用において、そうしたVoIPと組み合わせるべきサービスが、近年画期的な電話システムとして広まっている「クラウドPBX」です。

今回は、VoIPとクラウドPBXとの関係性を、それぞれの仕組みやメリットを解説していきます。また、特に「VoIPゲートウェイ」との併用のメリットと、クラウドPBXサービスの選び方も解説していきますので、特にビジネスフォン等からのクラウドPBXへの移行を検討されている企業担当者様にも参考にしていただけるはずです。

VoIPとは?IP電話との違い

冒頭でも軽く説明した通り、「VoIP」とは、「インターネット回線を利用した通話技術」を意味する言葉です。読み方は「ブイオーアイピー、ボイップ、ボイプ」などと読み、正式には「Voice over Internet Protocol」を略した言葉です。「Internet Protocol」というのは、インターネット回線の通信規格や通信手順を意味します。つまり、名前通りの意味ということです。

VoIPの仕組みは、通話音声(アナログ音声信号)を、まず「IPパケット」と呼ばれるデジタルデータに変換(圧縮・分割化)します。このようにデータに変換することでインターネット回線(IPネットワーク)に載せられるようになるので、インターネット回線を利用してIPパケットを相手方に伝送します。このようにして相手方に送られたIPパケットを、再び人間の耳で聞き取れる音声信号に復元する、というのがVoIPの基本的な仕組みです。

世間では「IP電話」という言葉も、意味合いとしては同じ「インターネット回線を使った通話」として用いられますし、言ってしまえばIP電話も上記と同様の仕組みの通話を行うためのものです。しかし、正確な意味合いとしてはVoIPとIP電話は明確に異なります。

簡単に違いを説明するとするなら、VoIPは先ほども少し書いたように、上記のような仕組みの「通話技術そのもの」を指して使う場合に利用される言葉です。そしてIP電話は、このVoIPという通話技術を利用した「電話」という行為、もしくは「電話機」というハードウェアを指す言葉として常用されています。

クラウドPBXとは?

企業では、従来はVoIPを利用した電話ではなく、固定電話回線を用いた固定電話機での電話運用が一般的でした。そしてそうした固定電話機でのビジネス目的での電話運用の仕組みを「ビジネスフォン」と呼んでいました。

現在でもビジネスフォンは一般的となっていますが、VoIPがここ10年の間で急速に一般にも普及したことで、企業向けの電話システムにもVoIPを利用した仕組みが登場し始めました。その中でも既存のビジネスフォンの仕組みを踏襲しながらも既存の仕組みを大きく超えた利便性を獲得したのが「クラウドPBX」です。

ここからは、特に近年話題の画期的な電話システム「クラウドPBX」とは何か、できる限り簡潔に解説していきます。

クラウドPBXの仕組み

クラウドPBXは、従来のビジネスフォンの仕組みの延長線上にある、企業向けに特化した電話システムです。

従来のビジネスフォンは、たとえば会社内で多くの社員と一緒に、同じ会社代表番号宛ての電話番号に対する多くの着信に対し、複数の固定電話機を使って同時並行的に応対したり、自分宛てにかかってきた着信を相手が求める別部署の担当者に取り次いだりするなど、「複数人(複数の電話機)で会社の電話回線を共有する」ために必須となる仕組みです。また、社内の電話機同士で電話をする「内線通話」も可能です。

その仕組みを構成するのは、複数の電話回線(外線・内線)と複数の固定電話機の他に、それらと有線接続することで回線と電話機を一元的に管理する「主装置(PBX)」があります。従来のビジネスフォンではこの主装置を会社内に物理的に設置し、主装置に対してすべての固定電話機と電話回線を有線接続することで成り立っています。

クラウドPBXも、主装置を用いて電話機と回線を一元管理するという仕組み自体は一緒です。しかしながら、ビジネスフォンでは社内に設置していた主装置を、クラウド上、すなわちインターネット回線上に設置している点がまず大きく異なります。そして、そのクラウド上の主装置に対して、固定電話機だけでなく、携帯電話やスマートフォン、PCなど持ち運び可能なデバイスをインターネット回線で相互接続することで、物理的制約に縛られず自由に持ち運んで運用できるというのが、従来のビジネスフォンとの大きな違いです。

クラウドPBXのメリット

従来のビジネスフォンは、先ほども説明した通り、主装置と電話機と回線という電話運用に必要な設備が、全て会社拠点内に存在しています。その為、どんなに便利であっても、会社内にいなければ、もっと言えば自分のデスクにいなければ、電話を使うことはできません。

それに対してクラウドPBXでは、インターネット回線上(クラウド上)に主装置を設置しています。詳しくは省きますが、簡単に言うとインターネット回線自体に主装置の機能を持たせているというようなもので、もっとわかりやすくいえば、主装置が空に浮かんでいる雲(=cloud)の中にあるというイメージです。

雲の中に主装置があって、携帯やスマホでその主装置と常に相互接続している状態と考えれば、クラウドPBXは「場所に縛られない運用である」ことがイメージできるのではないでしょうか。そしてこの「場所に縛られない運用」こそが、クラウドPBXの最大のメリットであり、クラウドPBXのもつ全てのメリットに通じる概念といってもいいでしょう。

たとえば「電話の取次ぎ」のシーンでは、従来のビジネスフォンの場合、取り次ぐ先の担当者が社内のデスクにいなければ取次ぎができず、外出中であれば都度内勤者がメモで用件を控えておき、それを担当者の携帯に外線通話して伝えるという手間が発生します。また、担当者が電話を折り返すときにも、会社の番号を使わないといけない場合にはいったん外出先から帰社したうえで折り返さなければならないという、非常に面倒な制約がありました。

クラウドPBXでは、こうした手間なく、会社から外出先の担当者の携帯に直接電話を取り次げるほか、折り返しも携帯から会社の番号を使って通話できます。非常に合理的であり、内勤者に無駄な手間をかけさせることもありません。会社の外にいても会社の番号が使えるので、出張中でも電話応対が可能です。

また、内線通話も会社の中にいなくても使えます。これは想像が追い付かない方もいそうですが、クラウドPBXでは内線通話を会社の外で使えるのです。もっと言えば、東京と大阪というように数百キロ離れた拠点同士でも、同じ会社の仲間であれば内線を構築でき、拠点間の通話も同じオフィスにいるかのような手軽さで行えるうえ、内線なので通話料が無料になります。設定すれば海外拠点とも国際電話を使わず内線電話ができるクラウドPBXもあるくらいです。

VoIPゲートウェイとクラウドPBXを併用するメリット

このように、場所に縛られない運用が非常に便利なクラウドPBXですが、クラウドPBXはただ便利というだけでなく、固定電話回線の電話番号を使って、IP電話など異なる回線宛てにも電話を掛けることが可能です。

これは実はクラウドPBXがなくても可能なのですが、クラウドPBXなしでそうした通話を可能にするには、代わりに電話回線とインターネット回線を中継する特殊な機器が必要になります。これが「VoIPゲートウェイ」と呼ばれるもので、クラウドPBXとの併用も可能です。

ここでは、VoIPゲートウェイとは何かということと、クラウドPBXと併用するメリットを解説していきます。

そもそもVoIPゲートウェイとは?

現在30代後半以上の方ならご存知のように、昔は電話回線を使ってインターネットに接続していた時代がありました。しかし、色々なデメリットからこの接続方法は先細りとなり、現在では、インターネット回線と電話回線というのは全くの別物です。

先ほども説明した通り、VoIPはインターネット回線を利用した電話であり、従来の電話は今まで通り電話回線を用いています。これは、たとえば固定電話から固定電話や携帯電話に電話を掛ける際には同種の回線を用いているため問題がないのですが、固定電話からIP電話に電話を掛ける時や、IP電話から携帯電話番号に掛ける時には大きな問題が起きることになります。発信側と受信側で、回線の種類が全く違うからです。

もっとわかりやすくいうなら、インターネット回線を利用した通話(VoIP/IP電話)は通話音声をIPパケットというデジタルデータに変換して相手に届けます。これに対して、電話回線を使用した電話は通話音声を電気信号に変換して相手に届けるので、何も考えずに相互接続すると繋がらないということになります。伝送している仕組みが全く異なるからです。

そうした異なる回線を中継するための機器が「VoIPゲートウェイ」です。VoIPゲートウェイは、このように発話者と受話者で通信規格が異なる際に、発話者と受話者の間に入って相互に伝送可能な状態を保つために、必要に応じて発話音声を受話者が聞き取れる形式に変換してくれます。

たとえば「固定電話→IP電話」の場合、電話機が通話音声を電気信号に変更しますが、そのままではIP電話で受信できないので、すぐにVoIPゲートウェイが電気信号をIPパケットに変換します。そして、「IP電話→携帯電話」の場合にも、IP電話が音声をIPパケットに変換したのち、すかさずVoIPゲートウェイがIPパケットを電気信号に変換することで、相互の通話を成り立たせているのです。

クラウドPBXと併用するメリット

このように便利な機械であるVoIPゲートウェイですが、クラウドPBXと併用することができます。

クラウドPBXと併用する上で最もメリットがあるのは、「本社では既存のビジネスフォンなど電話回線運用を維持しつつ、支社やコールセンターではクラウドPBXを導入したい」といった場合です。この時にはインターネット回線を基盤としたクラウドPBX網と、通常の電話網が同じ会社内で併存してしまうことになりますので、VoIPゲートウェイの設置を行う必要があります。

また、既存のビジネスフォンのリース契約が残っていてすぐにクラウドPBXへ移行できないといった場合や、ビジネスフォンからクラウドPBXへ完全移行するのが不安な場合にも、クラウドPBXとVoIPゲートウェイの併用ができるという特性を生かすことで、リスクを軽減できます。完全移行した際に仮に環境や条件との相性が悪かったり不具合が起きたりしてクラウドPBXが使えなくなったとしても、既存のアナログ電話網を使うことで電話運用は変わらず維持できるからです。

クラウドPBXとVoIPゲートウェイを併用は、このように併用ができること自体がメリットではあるのですが、その他にも「通話量の削減」が主なメリットとして挙げられます。たとえば着信はアナログ電話で受けても通話料はかかりませんが、発信はアナログ電話でしかも相手が遠い距離にいるほど通話料は高額になりますので、IP電話に変換した方が一律料金となり大幅に安くなります。

このようにVoIPゲートウェイの中継や変換といった機能をうまく利用し、本来ならアナログ電話の通信となるものをVoIPへ変換することで、通話料の節約につながります

クラウドPBXサービスの選び方

さて、ここまで読んでいただいてクラウドPBXに興味を持っていただけたら、早速導入したくなるというのが人の性というものです。ここからは、クラウドPBXサービスの選び方を解説していきます。

機能をチェックする

クラウドPBXは、既に説明済みの通り、ビジネスフォンと仕組み自体は似通っているので、ビジネスフォンで使える機能の大半が使えます。しかし、クラウドPBXはベンダーによって提供している機能が異なるうえ、その機能が基本料金だけで使える「基本機能」なのか、追加料金を加算して使えるようになる「オプション機能」なのかも異なります。もし、使いたい機能がオプションばかりだったとすれば、追加料金が高額となってしまいコストが高くなってしまうでしょう。

その為、まずはクラウドPBXで使いたい機能を社内で話し合い、ある程度希望する機能を取りまとめておきましょう。そして、使いたい機能リストに入っている機能を、できれば基本機能として提供しているベンダーから順番にリストアップしていくような選び方をおすすめします。このような順番でベンダーを検討することで、あくまでも使いたい機能を優先して選んでいくことができます。

利用可能な電話番号をチェックする

特に企業であれば、電話番号が変更されるリスクはなるべく避けたいもの。クラウドPBXを導入するにしても、できれば元々使っていた電話番号を使いたいですよね。特に既存のビジネスフォンで固定電話番号を使っていた場合、固定電話番号は一定の社会的信頼性を担保してくれるものでもあるからです。

しかし、先ほども説明した通り、既存の固定電話番号の条件や、クラウドPBXサービスを提供するベンダーが使用している回線の種類によっては、元々の会社の電話番号が使えず、電話番号の変更を余儀なくされる場合があります。できれば「LNP」などを駆使してでも、そうしたリスクは避けたいものですが、先述の通りLNPができない場合もあります。

その為、元々の固定電話番号がどこから取得されたものなのかの確認も含め、クラウドPBXのベンダーと「既存の電話番号が使えるか」は慎重に慎重を重ねて確認を取りましょう。どうしてもの場合は別ですが、VoIPゲートウェイとの併用を考えてでも、最大限既存の電話番号を残す選択肢を維持するべきです。

利用可能な端末をチェックする

クラウドPBXの多くは、利用可能な端末の種類が多いことで知られています。携帯電話・スマートフォンなどの携帯端末だけでなく、IP電話機などの据え置き型電話機や、タブレット端末・ノートパソコン・デスクトップパソコンといった電波を発信しない機器にも対応しているベンダーが多いです。

大抵の場合、このように柔軟に利用端末を幅広い選択肢から選べるのですが、中にはソフトフォンに対応していない場合や、逆にソフトフォンにしか対応していないなどの違い、回線の種類の問題など複合的な問題によって、使える端末がどうしても限られてしまうサービスもあります。利用可能な端末は必ず契約前にチェックしましょう。

利用可能な電話回線をチェックする

これは「電話番号」の問題ともかぶってくるのですが、クラウドPBXには利用できる回線の種類が限られたり、フリーダイヤルでも対応している番号に制限がある場合があります。

特に、IP電話回線専用で固定電話番号に対応していなかったり、フリーダイヤルでも自社で使用している番号に対応していない可能性もあり、そうしたベンダーと何も知らずに契約してしまうと、フリーダイヤルが使えなくなったり、電話番号の変更を余儀なくされたりするなど導入に非常に手間がかかってしまいます。

このような問題が起きないよう、契約前に利用できる回線や電話番号の制限があるかどうかは必ず確認するようにしましょう。

料金体系をチェックする

クラウドPBXの料金体系は、基本料金+通話料+オプション料で構成されているなど、シンプルでわかりやすいものが多いです。特に、1台いくらの従量課金制であれば、1台単位での契約回線数の上下にも柔軟に対応できます。

会社というのは営利組織であり常に変化や成長を伴うものですから、回線数の変動に対して柔軟なベンダーであればあるほど都合がいいものです。しかし、運用方針によっては従量課金だと高くついてしまい、数十台・数百台単位でざっくり数ごとにプラン建てされているほうが逆に都合がいい場合もあります。

会社経営は想定通りにすんなりうまくいくとは限りませんが、数か月~数年先を見据えた経営計画を立てていくうえでも、会社の通信インフラであるクラウドPBXの料金体系をきちんとチェックして、複数パターンを想定してシミュレーションを重ねると安心です。特に規模の拡大・縮小どちらにも対応できるようにしておくといいでしょう。

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VoIPとクラウドPBXの関係性や仕組み・メリット、VoIPゲートウェイとの併用のメリットや、クラウドPBX導入の際の選び方に至るまで、網羅的に解説しました。

特にVoIPゲートウェイとの併用に関しては複雑な話になってしまいましたが、「ビジネスフォンかクラウドPBXか」の究極の選択に縛られることなく、より柔軟に両者を併存させながら運用したり、また段階的な移行を促したりと便利な側面が多いことを理解いただけていれば幸いです。

条件によっては、どうしてもビジネスフォンからクラウドPBXに完全移行すると支障が出てしまう、電話番号の変更を余儀なくされる場合もあるでしょう。そうした場合には、VoIPゲートウェイとの併用も視野に入れて検討してみてください。