VoIPとアナログ電話を両立するには?構内電話交換機やVoIPゲートウェイの役割

VoIP

従来、企業向けの電話といえばアナログ電話(固定電話)が主流でした。しかし、アナログ電話設備の老朽化を理由として、NTTが2025年を目途にアナログ電話網を全てIP網へ移行することを発表し、従来型のアナログ電話の役割は終わろうとしています。

しかし、IP電話の普及は進んでいるもののまだまだ少数派であるのが現実で、急に変えろと言われても困る企業も多いでしょう。ましてや直前に慌てて変えることは周知も進まずトラブルのもとになってしまいます。そこでおすすめなのが、IP網を使った電話の運用と、従来のアナログ電話を使った運用を両立させながら、段階的にIPへ移行していく方法です。

今回は、IP電話網で運用するにあたり使用される通信技術「VoIP」と、アナログ電話を両立させる方法を解説していきます。VoIPや、企業向けの電話回線を共有できる仕組みを作るのに必要な「構内交換機」、新たな企業向け電話システムである「クラウドPBX 」など、役立つ知識を基本から説明していきますので、電話運用に詳しくない方もご安心ください。

VoIPとは?

「VoIP(ブイオーアイピー、ボイップ、ボイプ)」は、「インターネット回線を使った通話技術」を意味する言葉です。正式名称は「Voice over Internet Protocol」で、「Internet Protocol」とは、インターネット回線を介する通信の規格や手順を指し、世間でよく言われる「IPネットワーク」や「IPアドレス」のIPはこれを略したものです。総合すると、上述と同じ「インターネット回線の通信規格を利用した通話」ということになり、即ち文字通りの意味合いということになります。

VoIPはその名の通りインターネット回線を用いる通話技術なので、通話音声の伝送に際し電話回線は不要です。簡単に仕組みを説明すると、アナログ通話音声を「音声パケット」と呼ばれるデジタルデータに変換してインターネット回線に乗せて伝送し、相手の電話機に届いた音声パケットを再度アナログ通話音声に復元するものとなっています。

構内電話交換機とは?

企業向けの電話システムにおいて最も重要なのは、「電話回線を複数台の電話機で共有する」ことです。なぜかといえば、通常の個人向けの電話と同じ仕組みだと、1回線(1つの電話番号)につき1台の電話機でしか対応できないため、日々複数の顧客や取引先からひっきりなしに電話がくる企業では、すぐに回線がパンクしてしまうからです。常に「話し中」の状態になってしまえば、顧客や取引先はなかなか連絡が取れずイライラしますし、電話がつながらない分だけの無数のビジネスチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。

そうした背景から、企業の電話というのは1つの電話番号に対し複数の回線枠で複数の電話機を用いて電話に対応できるようにしないといけませんが、複数台の電話機を使った回線の共有を実現するために必要な機器が「構内交換機(PBX)」です。

構内交換機とは、公衆電話網に対して多数の構内電話機を接続できるようにする機械のことで、企業内では電話回線と社内の電話機を一元的に管理するために用いられます。会社内に構内交換機を物理的に設置し、社内に引いた電話回線(外線・内線)と社内の固定電話機をすべて有線接続することで、電話機と回線をまとめて構内交換機の管理下に置くことができます。つまり、着信を自動的に固定電話機に割り当てたり、電話機の操作に応じて着信を他の電話機に切り替えて接続したりできるのです。

構内交換機は英語でPBXとも呼ばれ、PBXとは「Private Branch eXchange」の略であり、日本語では「主装置」とも呼ばれます。企業内で電話業務を行う際、会社代表番号宛ての着信に対し複数の電話機で同時に応対したり、特定の電話機から他の電話機に電話を取り次いだり、内線通話ができるのは、構内交換機があるからです。たとえば企業向けの電話運用として今も普及している「ビジネスフォン」でも、構内交換機がシステムの主幹を担っています。

アナログ電話でVoIPを活用するには?

従来、電話というものは電話回線を用いるのが当然となっていましたので、通話に際してどんな回線を使っているのかを考える必要はほぼありませんでした。しかし、今では電話も多様化し、VoIPが普及してからは一口に「電話」といっても、それぞれ回線の種類が違うというのは当たり前になっています。

第一章でも説明した通り、VoIPというのはインターネット回線を利用した通話技術です。それに対して、アナログ電話は電話回線を用いています。当然、この2つはまったく別々の回線であり、物理的な回線がまったくの別物であるだけでなく、音声伝送の仕組みも全然違う技術が用いられています。そのため、電話回線を利用しているユーザーの電話機と、VoIPを利用しているユーザーの電話機を相互接続することは、通常ではできません。

しかし、世の中には電話回線を使っている人もいれば、VoIPの技術を用いた電話、たとえば「IP電話」などを使っている人もいますので、IP電話が普及する中で相互通話ができない不具合に直面することも多くなっています。そうした時に2つの間に入ってトラブルを回避してくれるのが「VoIPゲートウェイ」です。

VoIPゲートウェイとは、簡単に言うとそれぞれの使っている電話機の通信規格が違う場合にも、通話音声を相手の電話機に合わせた形式に自動的に変換して、相手にも伝わるようにしてくれる機械のことです。たとえばアナログ電話機では通話音声をアナログの音声信号としてそのまま伝送しますが、相手がIP電話の場合はアナログ音声信号を受け取ることができないので、VoIPゲートウェイが音声信号をデジタルデータに変換し、IP電話でも聞き取れるように変換します。すなわちVoIPゲートウェイとは、異なる言語を相互通訳するように、異なるネットワーク同士をうまいこと繋げてくれる便利な機械なのです。

そのため、仮に会社の電話運用がビジネスフォンのようにアナログ電話であったとしても、VoIPゲートウェイがあればアナログ電話運用のままでIP網を活用することができます。たとえば、本社がアナログ電話運用であっても、支社をIP電話網にするなど、同じ会社内で異なる電話運用を併用することが可能です。

クラウドPBXを活用した方がシンプルで簡単

このように、異なる回線同士でも問題なく通話できるようにしてくれるVoIPゲートウェイは大変便利なものです。しかし、理想を言えば、VoIPゲートウェイを活用するより、アナログ電話もIP電話も問題なく通話ができる「クラウドPBX」を導入・活用したほうがいいでしょう。クラウドPBXであれば手間がかかりませんし、仕組みも非常にシンプルで導入も簡単です。

ここでは、近年画期的な電話システムとして話題の「クラウドPBX」とはどういうものなのかを説明したうえで、VoIP導入に際してクラウドPBXが最適な理由を解説していきます。

クラウドPBXとは?

さて、「PBX」という単語をどこかで聞いたことはないでしょうか。記憶力に自信のある方はお気づきの通り、本記事の第2章で説明した「構内交換機」の別名です。そのままつなげれば「クラウド構内交換機」、すなわち「クラウドにある構内交換機」ということになります。クラウド(クラウド環境)とは、インターネット回線上にあるシステムにアクセスすることで、求めるサービスを利用できる仕組みのことです。

構内交換機の役割と仕組みは既に説明した通り、構内交換機に電話回線と固定電話機を有線接続することで構内交換機が回線と電話機を一元管理するものでした。クラウドPBXも、この仕組み自体は変わりません。しかし、クラウド上、つまりインターネット回線上に構内交換機を設置することで、社内に物理的な構内交換機を設置することなく運用できるというのがクラウドPBXの大きな特徴です。

クラウドPBXではその場に構内交換機がないため、従来の「ビジネスフォン」のように電話機や回線を有線接続するわけにはいきません。クラウドPBXでは、電話機は携帯電話やスマートフォンなど持ち運び可能なデバイスを用いて、インターネット回線を介して相互接続します。インターネット回線が繋がる場所であればどこへ持ち運んでも運用を維持することができるので、場所に縛られることなくビジネスフォン的な運用が可能になります。また、IP固定電話機やデスクトップパソコンなどでもLAN接続を用いてクラウドPBXに接続し、通話が可能になります。多種多様なデバイスが使用できるのがクラウドPBXの特徴です。

VoIP導入ならクラウドPBXが最適な理由

先ほども少し触れましたが、ビジネスフォンのようなアナログ電話運用の場合でも、VoIPゲートウェイを活用することで便利にVoIPを活用できます。しかし、VoIPをもっと簡単に導入し、もっと便利に活用しようと思ったら、やはりクラウドPBXを用いるほうがはるかに合理的です。

なぜかといえば、VoIPゲートウェイは導入に手間がかかります。通話の際には自分も相手も物理的な機器を設置しなければなりませんし、導入の際には接続なども複雑で専門的な知識が求められます。物理的な機械を社内に設置するということは、保守管理に関しても自分たちで責任を負わないといけなくなり、その分のコストも負うということになります。

これに対してクラウドPBXは、先述の通り物理的な設備の設置が一切不要です。導入の際に用意するのは、たとえば携帯電話やスマートフォンのような、インターネット回線に接続できるデバイスだけでOKです。その状態でクラウドPBXベンダーと契約して開通手続きを行うだけで、早ければ数日~1週間程度で運用開始できます。

クラウドPBXであれば、VoIPゲートウェイを使うことなくアナログ電話・IP電話問わず相互通話が問題なく行えますので、手間をかけることなく同条件、いやそれ以上に便利な運用を導入・活用できるのです

導入の手間だけではない!クラウドPBXのメリット

クラウドPBXは、以上のように最低限の手間で導入・活用が開始できるという点も魅力的ですが、それ以外にも様々な利便性で知られ、特に企業向け電話システムとして非常に画期的なメリットが多くあることもまたおすすめできるポイントとなっています。ここでは、導入の手間がないことだけではない、クラウドPBXの様々なメリットを含めて解説していきます。

コストの削減

クラウドPBXは導入に手間がかからないだけでなく、大幅なコスト削減も可能です。

まずは、先述したように物理的設備の設置が不要であることによる、初期費用のコスト削減。従来型のPBXすなわちビジネスフォンでは、構内交換機や固定電話機の購入と設置にかかる購入費・設置工事費が安くても数十万からと非常に高額でしたが、クラウドPBXではそうした費用が一切不要です

かかったとしても数万円程度の初期費用に加え、スマホの購入費が上乗せされるくらいで済みます。もし既に社内スマホを支給していればそれを転用すれば使えるので、場合によってはスマホの購入費すらもかかりません。また対応デバイスも多いため、社内PCやタブレット端末も活用可能です。

もう1つ代表的なのが通話料の削減です。ビジネスフォンのような従来型PBXでは物理的設備を社内に設置し有線接続する必要があったため、内線通話は会社内でしかできず、別拠点への連絡は外線を使わなければなりませんでした。しかし、クラウドPBXでは先述の通り場所に縛られない運用が可能になるので、複数拠点を跨いだ内線ネットワークの構築も可能で、場合によっては海外拠点とも内線通話ができます。内線通話は通常の電話と同じく無料あるいはほぼ無料で済むので、このように内線通話をうまく活用することで通話料を大幅に削減できます。

業務効率の改善

クラウドPBXでは、場所に縛られない電話運用が可能です。これは、顧客や取引先との相互連絡を大幅に効率化してくれます。

たとえば電話の取次ぎのシーンでは、従来であれば外出している社員には電話は取次ぎできないので、内勤者が用件をメモするなどして控える必要がありましたし、連絡を返すにも外出先では会社の電話番号を使えないので、電話を折り返すためにわざわざ帰社する必要がありました。

クラウドPBXなら、会社の電話から直接外出先の担当者の携帯に電話を取次ぎすることも可能ですし、場所に縛られずにどこでも会社の電話番号を利用した通話が可能なので、折り返すために帰社する必要もなくなります。また、社員同士の内線通話も場所を問わずどこででも行えるので、社員みんながどこにいても連絡が繋がり、緊急の連絡も滞りなく行き渡りますし、より緊密な連携が維持できます

働きやすさの改善

上記2つだけでも十二分に便利ですが、クラウドPBXの最大の特徴である「場所に縛られない運用」は更なるメリットを生み出してくれます。

場所に縛られないということは、会社の外にいても関係なく運用ができるということです。つまり、社員全員が外出していても、在宅勤務であっても、少なくとも電話業務に関しては通常通り行えます。

近年、感染症のパンデミックの影響からテレワークなどオフィスへの出勤を伴わない多様な働き方の必要性が叫ばれていますが、これまではオフィスでしか電話が使えなかったことがそうした働き方を阻んでいた側面も大きいでしょう。しかし、クラウドPBXを導入すれば、こうした多様な働き方を気軽に導入できるようになります。要は、時代に合わせた多様な働き方を選択できるようになるということです。

また、在宅勤務ばかりでは不都合な場合も、時期に応じてワーケーションやサテライトオフィスでの勤務を導入することで、ある程度集団で集まることで生まれる活発な議論の場を生むこともできます。ワーケーションはリフレッシュや気分転換にもなりますので、拠点に縛られずどこででも働けるという事は、働きやすさの改善に必ずやつながることでしょう。

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クラウドPBXやVoIPゲートウェイなど、VoIPの導入に際して便利なシステムやその仕組み、メリットなどを解説しました。いずれ訪れる完全なIP網への移行に備え、これまでよりも便利な「場所に縛られない運用」を可能にしてくれるクラウドPBXに移行しておくことをおすすめします。

VoIPゲートウェイは、アナログ電話とIP電話双方を維持する際にも役立ちますが、異なるネットワーク同士を問題なく接続するというメリットを活かして、「クラウドPBXへの段階的な移行」にも利用できます。

もしいきなりクラウドPBXに全面移行するには不都合な場合や、今すぐ完全にクラウドPBXにしてしまうことに躊躇する場合にも、VoIPゲートウェイが「アナログ電話運用」と「クラウドPBX」の橋渡しを行ってくれますので、支社やコールセンターなど一部だけクラウドPBXに移行して運用を試すといったことから始めてみてもいいかもしれません。